体育祭
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体育祭当日。今日はたくさんの人が見に来ている。あれから2週間もやもやは晴れなかったけど、どうなりたいのかよくわからない自分もとりあえずスカウトはほしい。好成績をとっておくことに越したことはない。気張らなきゃ。
「緊張するよおー!」
「三奈ちゃんなら大丈夫だよ。一緒にがんばろ。」
「なまえー!負けないけどね!」
「ふふ、私も負けないよ。」
よっしゃー!と突き出された拳に自分のものを合わせる。熱血だ。
「そういや今日出店あるらしいよ。」
「そうなん!?」
「あとで買いに行く?」
「私屋台なんて初めてですわ……!」
響香の一言に女子たちがざわつき始める。百ちゃんお金持ちなんだなあっていうのはひとまず置いといてやっぱり出店ってわくわくするよね。お茶子ちゃんの目も輝いている。私もたこ焼き食べたい。
「禁断の果実……。」
「常闇くん、林檎好きなの?」
「ああ、好物だ。」
「いや今のでよくわかったね?」
「ええ、だってアダムとイブ。」
「理解力の塊すぎる。」
私と常闇くんの会話に尾白くんがさすがだな、と唸っている。体育祭前に余計なこと考えさせちゃったかもしれない。ごめんね。
「出店、林檎飴あるといいね。私も探してみる。」
「……助かる。」
「フミカゲ!オレモリンゴクウ!」
ダークシャドウくんも食べるんだ。ちょっと興奮気味ではしゃいでいる。可愛い。
そろそろ入場の時間だ。飯田くんが整列の呼びかけをしてくれる。けれどその呼びかけを無視して、何故か焦凍くんが緑谷くんに近づいた。何か緊迫した雰囲気だ。
「緑谷、客観的に見ても実力は俺の方が上だと思う。」
「へ!?うっうん……。」
「おまえオールマイトに目ぇかけられてるよな。」
ああ、やっぱりみんなも思うよね。明らかに緑谷くんとオールマイト距離近いもん。
「別にそこ詮索するつもりはねえが……お前には勝つぞ。」
オールマイトに目をかけられている緑谷くんに勝ちたい。焦凍くんの後ろにエンデヴァーさんが見えた気がした。きっと彼が1番憎んでいるだろう人。それなのに、どこかその人を追いかけてしまっている。No.1以外何も映さないような、同じ目をして。私にはそれが苦しかった。
「急にケンカ腰でどうした!?直前にやめろって……。」
「仲良しごっこじゃねえんだ。何だって良いだろ。」
仲裁に入ってくれる切島くんを振り切って、冷たい目が今度はこちらを向く。
「みょうじ、お前にも絶対負けねえ。」
「っ!……う、ん。」
上手く反応できない。特に接点のない私たちが焦凍くんからロックオンされたことに周りは驚いている。彼の言葉の意味に気づいているのは私だけだろう。
「轟くんが何を思って僕に勝つって言ってんのかはわかんないけど……。」
目を伏せた私とは対照的に、緑谷くんが口を開いた。
「そりゃ君の方が上だよ……。実力なんて大半の人に敵わないと思う。」
彼は考えながら、言葉を選びながら、それでも自分の意志を伝えようとしているように見えた。
「でも……‼みんな、他の科の人も本気でトップを狙ってるんだ。僕だって遅れを取るわけにはいかないんだ。」
その場の空気が、熱く変わっていく。
「僕も本気で獲りに行く!」
全員の士気が上がった。彼のまっすぐな言葉によって。私はそんな強い目を焦凍くんに向けることはできなくて。何も言えなかった自分が、ひどく恥ずかしく思えた。