体育祭
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「うおおお……何ごとだあ!!!?」
放課後教室から出ようとしたけれど、出られない。何故かたくさんの人が詰め寄せている。通して。響香と顔を見合わせてため息を吐いた。
「敵の襲撃を耐え抜いた連中だもんな。体育祭の前に見ときてえんだろ。意味ねえからどけモブ共。」
「知らない人の事とりあえずモブって言うのやめなよ‼」
分析100点言動0点!爆豪くんらしいけどヘイト集まるからやめて~。飯田くんの指摘も虚しく案の定外の人たちが怒り始めている。
「どんなもんかと見に来たがずいぶん偉そうだなあ。ヒーロー科に在籍する奴は皆こんななのかい?」
誤解です。もう完全に目の敵にされちゃってるよ。
「こういうの見ちゃうとちょっと幻滅するなあ。」
棘のある言葉の主は見覚えある紫。特徴的だったからよく覚えてる。
「……普通科だったんだ。」
「え、知り合い?」
「入試の時にちょっと。」
あの時助けた彼が今うちのクラスを見に来てる。彼はまだ、ヒーローを諦めてないってことだ。
「普通科とか他の科ってヒーロー科落ちたから入ったって奴、結構いるんだ知ってた?体育祭のリザルトによっちゃ、ヒーロー科編入も検討してくれるんだって。その逆もまた然りらしいよ。」
つまり、いくらでも立場を取って代わられる可能性があるってことだ。彼はわざとこれを言いに来たんだろう。
「敵情視察?少なくとも俺は調子のってっと足元ゴッソリ掬っちゃうぞっつー宣戦布告しに来たつもり。」
息が詰まった。彼が行きたくてたまらない場所に、私なんかが立っている。
「隣のB組のモンだけどよぅ‼敵と戦ったっつうから話聞こうと思ってたんだがよう‼エラく調子づいちゃってんなオイ!!!本番で恥ずかしい事んなっぞ‼」
いや爆豪くんの発言は総意じゃないです。完全に嫌われてしまっている。アウェイだと体育祭やりづらいなあ。元凶の爆豪くんは気にしてないようで人を押しのけて帰ろうとしている。
「待てコラどうしてくれんだ!おめーのせいでヘイト集まりまくっちまってんじゃねえか‼」
切島くんがたまらず抗議するけど爆豪くんの目は至って冷静だった。
「関係ねえよ。上に上がりゃ、関係ねえ。」
彼も、頂点を目指してるのか。そりゃそうだ。きっとみんなそうだろう。自分のことがよくわからなくなって悩んでるのなんて私くらいだ。情けない。
「ま、一理あるかもね。」
「おお、響香も大胆不敵だね。」
「それはやめて。さ、ウチらも帰ろっか。」
「うん。」
「そういやさっきの人には声かけなくていいの?普通科の。」
「んー、大丈夫かな。向こうも困るだろうし。」
「まあ、宣戦布告のあとじゃ気まずいか。」
私が彼に一体何と声をかけるというのだろう。ヒーロー科に落ちても諦めず、上だけを見てチャンスを窺ってる。絶対に夢を叶えるのだという強い瞳をして。そんな彼に目標すらままならずここに在籍してしまっている私が言えることなんて、何もない。
焦った気持ちを隠すように、私は教室をあとにした。