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「なまえ……!」
「響香。」
私の姿を捉えた響香がすぐに飛んできてぎゅっと私を抱きしめてくれた。
「馬鹿!どんだけ心配したと思ってんの!」
目には涙が溜まっている。可愛い友達を泣かせてしまうなんて。申し訳なさと同時にそんなに思ってくれてたのかと嬉しくもなった。私も抱きしめ返して大丈夫だよと伝える。
「ごめんね。」
「次あんな無茶したら絶交だから。」
「そ、それは絶対いや。」
気をつけよう。響香に笑いかけてもらえないなんてこの世の終わりだ。悲しくて死んでしまう。
みんなが次々と労いの言葉をかけてくれる中、梅雨ちゃんが控えめに近づいてきた。
「なまえちゃん、ごめんなさい。結局私があなたの邪魔をしてしまったわ。」
眉を下げ肩を落とした梅雨ちゃんの表情は暗い。私が弱いだけなのに。そんな顔しないで。
「ち、違うよ!私が勝手にしたことで、梅雨ちゃんが自分を責める必要なんてない。……少なくとも私は、梅雨ちゃんが無事でいてくれて本当に嬉しい。」
小さな体が、もう動かなくなるのではと怖かった。可愛い笑顔が二度と見られなくなるんじゃないかと。梅雨ちゃんが今普通に立って、私を見て話をしてくれている。どこにも怪我がなかったと聞いた時心底ほっとした。
「……そう。そうね。あなたはそういう人だったわね。だから……ありがとう。」
「梅雨ちゃんも。攻撃が来るって教えてくれて、ありがとう。」
「ケロケロ。」
そっと手を取り合う。きっと梅雨ちゃんも怖かった。あんなに近くで死の恐怖を感じたんだ。それでも私の心配をしてくれる。私は本当にクラスメイトに恵まれた。
「ほんと、急に飛び出していった時は肝が冷えたよ。」
「その節は本当にすみませんでした……。」
多分尾白くんが1番びっくりしたよね。止めようとしてくれてたし。責任感じさせちゃったかもしれない。ごめん。
「それでその、1個聞いていい?」
「うん?」
「相澤先生のこと、消太くんって呼んでなかった……?」
「あ。」
尾白くんの一言に教室の空気が止まる。
いやめちゃくちゃ呼んでましたね。周りを気にする余裕がなかったのでこれは、うん。仕方ない。
「なになに!?何で!?」
「どういう関係!?」
ああ~、やっぱり恋バナ大好きコンビ食いついてる。どうしよ。
「ごめん、こんな時に言うべきじゃないとは思ったんだけどどうしても気になって……。」
「いや尾白くんはほんと何も悪くないです。むしろごめん。」
「え、てことはやっぱ付き合って……?」
「禁断の関係……。」
常闇くんまでやめてください。
「全然そういうんじゃないです!相澤先生とは昔からの知り合いで!小さい時からよく遊んでもらってて!親戚のお兄ちゃんみたいな!ただそれだけ!」
「ええ~ほんとにぃ?」
「ほんとに。マイク先生ともそんな感じ。本人に聞いてみてください。」
これでもう許してほしい。だってこれが全てだし。まだまだ質問したそうな三奈ちゃんと透ちゃんから何とか逃れる。
ふと後ろから視線を感じた。そちらを見ると焦凍くんと目が合う。案の定すぐに逸らされたけど、今こっち見てた……?
「そういや轟も心配してたぜ!」
「え、」
横から切島くんがやってきて事件後のことを教えてくれる。いやいやそんな。彼が私のことを心配なんてするだろうか。だってずっと、挨拶もままならないのに。
「ああ、そうね。警察の人にみょうじの容体聞いたのも轟だったし。」
瀬呂くんも頷く。え、本当に?2人が言っているということはそうなんだろうけど、いまいち信じられない。
一体どうして、なんて。そんなことが聞けるはずもなく涼しげな横顔をただ見つめることしかできなかった。
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