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今朝はいつもより1時間も早く家を出た。昨日個人チャットで呼び出されていたからだ。お医者さんにもお母さんにもまだ静養してていいと言われたけど、なるべく授業の遅れは取りたくない。みんなにも早く会いたい。
教室の扉を開けるとすでに彼の姿があった。私に気づいて駆け寄ってきたと思ったら、一瞬で姿が見えなくなる。
突然のことで理解するのに時間がかかったけれど、自分のものではない温かさをすぐ近くに感じてようやく抱き締められているのだと気づいた。
「せ、ろくん……!?」
慌てて離れようとしたけど後ろに回された手は震えていて。何も話すことなくただ体温を確かめるように力を込める彼に胸が痛んだ。
「……ごめんね。」
心配かけて、迷惑かけてごめん。そっと背中を撫でるとゆっくり体が離れていった。なくなってしまう熱が少し寂しい。目の前の瀬呂くんの顔は悲しそうだった。
「俺の方こそ、ごめん。そんでありがと。」
「え?」
「俺がワープさせられないようにしてくれたろ?あれ、ありがと。でももうしないって約束して。」
黒い靄に包まれた時か。助けてくれようとした手を突き放してしまった。きっとすごく傷つけた。
「えっと……。わかった。」
「ん、いい子。」
子どもをあやすようにポンポンと頭を撫でられる。
「みょうじの気持ちは嬉しいけど、俺は俺でちゃんと自分のこと守れるから。」
「ごめん。余計なことして。」
私の言葉にまた彼の顔が曇る。何だか瀬呂くんに対して間違えてばっかりだ。
「や、そうじゃなくて。んーとね、みょうじがみんなを守りたいっていうのは十分伝わった。でも、俺もみょうじを守りたいのよ。それはわかる?」
「う、ん。」
1つ1つ、噛み砕いて説明してくれる。たくさん傷つけたかもしれないのに、まだ彼は私のことを気にかけてくれるのか。
「みょうじが必要以上に傷つかなくて良いよう、俺も強くなるよ。だから自分を犠牲にしてまで守ろうとしてくれなくて大丈夫。掴めるときはちゃんと俺の手掴んで。おっけい?」
「お、おっけい。」
ぱっといつもの飄々とした表情に戻る。安心させてくれようとしているのが伝わって、それが本物のヒーローみたいで。やっぱりかっこいいなあと胸が高鳴った。
「はい、瀬呂くんとの約束。本当ありがとな。あと病み上がりに早起きさせてごめん。体ほんと平気?」
「体は、大丈夫。あの、私の方こそ……心配かけてごめん。」
「やー心配はめちゃくちゃした!まじで死んだかと思った。」
「ご、ごめん。」
本当に運が良かった。オールマイトが来なかったらどうなってたかわからない。それもこれも、みんなが頑張って助けを呼んでくれたからだ。またこうして瀬呂くんと話せることが何より嬉しい。
「はは、謝んの禁止な。それにさっき抱きしめちゃったし。それでチャラってことで、ど?」
「え、う、あ。そんなんでいいなら……?」
「俺にとっては十分よ。」
あくまで普段通りの彼に顔が熱くなる。しばらく2人きりの教室で、何でもない話をしていた。
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