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頭がふわふわする。私どうなったんだっけ。オールマイトが来て、あったかくて。それから、えーと。そうだ消太くん。
「っ消太くん……!」
「おわ!?」
頭、痛い。ここどこ。消太くんは、どうなったの。
「ヘイヘイリスナー、いきなり起き上がるのは感心しねえなァ。打ってんだぜ、頭。」
「ひざしくん……。」
隣には渋い顔のひざしくんが座っていた。恐らくここは病院だろう。
「ど、どうなったの。消太くんは、あの、敵は?オールマイトが!」
「まあまあ落ち着け!順番に話してやっから!まずは深呼吸だ、ほらリピートアフタミー。」
「う、うん。」
吸って吐いて。吸って吐いて。ひざしくんに合わせてゆっくりと息を整える。……少し落ち着いてきたかも。
「ヨシ、いいな。まずは1番知りてえだろう相澤。すげーボロボロだったけどな、命に別状ないそうだ!」
「よ、かった……。」
肩の力が抜ける。生きてる、消太くん。
「まあなまえが無茶してなけりゃヤバかったかもだけどなァ。命の恩人、ってやつだな。」
「あの時何も考えてなかったから……。怒られると思う?」
「HAHA!拳骨の1発や2発は覚悟しといた方がいいな!」
「だよねえ。」
それから脳みそ敵が制圧されたこと、チンピラ以外の連合には逃げられたこと、緑谷くんが足を怪我した以外クラスメイトは無事だったことを教えてもらった。何か緑谷くんいつも怪我してるなあ。
「お前サンの具合についてはこれから医者に詳しく聞くと良い。親御さんは必要な荷物取りに一時帰宅中。ちなみに今日1日は休校だ!」
「ひざしくんが先生らしいこと言ってるのちょっと新鮮。」
「こいつぁシヴィー!」
お医者さんには今はまだ怠くて動かしにくいかもしれないけど回復的には問題ないと言われた。夜には両足で歩けるようになるようだ。このあとは体の負担にならない程度に脳の検査をするらしい。
「んじゃあ、なまえも起きたことだし俺はそろそろ行くぜ。」
きっと忙しいのに見に来てくれてたんだろう。正反対に見えて、優しいところは消太くんと一緒なんだよね。
「ひざしくん、ありがとう。」
「ま、今は休むのが仕事と思って大人しくしとけな。」
サングラスの下の目が細められる。早く元気な姿見せて安心してもらわなきゃな。
昼頃に起きて、検査が終わったのは夕方だった。休み休みやってたからなかなか時間がかかった。今は検査終了のあと許可が下りたので歩いて飲み物を買いに来ている。
自販機でレモンティーのボタンを押し近くの長椅子に腰かける。ぼんやりと窓の外を眺めながら買ったものに口をつけた。
そういえば、1度も携帯を見ていない。スマホの電源を入れてみると大量の通知が届いていた。すごい見たことない数。
みんな心配の連絡をくれていた。グループチャットから個人チャットまで。私の体を気遣ってか返信しなくていいという旨のものがほとんどだった。
全員に返すのはなかなか大変なので、「心配ありがとう、無事です」とクラスチャットに送る。秒で誰かの既読がついてすぐに個人チャットが飛んできた。
明日からもう学校に行くと伝えると朝早く来られないかとの返信がくる。いつもと違う雰囲気の文面に私はすぐさま了承した。
「もう歩けるのか。」
携帯をポケットにしまっていると後ろから突然影が伸びた。
「!消太く……しょ、消太くん?」
慌てて振り向くと全身包帯ぐるぐる巻きのミイラが立っていた。ハロウィン?
「消太くん絶対出歩いちゃ駄目でしょ。」
「処置が大げさなだけだ。大したことない。」
「そんなわけないよね……。」
病室で大人しくしてた方がいいよ。絶対。私の心配なんてお構いなしに消太くんが隣に座る。真面目な表情が風貌とちぐはぐでどう反応していいか困ってしまう。
「……お前が、突っ込んでくるとは思わなかった。」
「ご、ごめんなさい。」
怒られるのかと身構える私を見て消太くんはおかしそうに微笑んだ。
「説教はまた今度だ。今は、褒めてる。」
「褒めてる?」
「お前は成績優秀だが卒なくこなすところがあるだろう。」
「え、真面目に取り組んでますが。」
ちょっと心外。そりゃあ緑谷くんほど泥臭くないけど。
「無意識なんだろうがな。自分の限界を出し切ってまで頑張ることしないだろ。特に個人競技。」
それは心当たりある。戦闘訓練はみんなに迷惑かかるから結構頑張ったけど体力テストは正直もうちょっといけてた気がする。そこそこの点数が取れてるからと無意識にリミッターかけてたのかも。
「だから驚いた。お前が俺のところに走って来たのも蛙吹を助けたのも。」
「あの時は体が勝手に……。」
「そういうタイプに見えてなかったってことだ。何も考えずに自分より格上の敵と闘うなんて馬鹿なこと、しないと思ってた。」
今馬鹿って言った。少し頬を膨らませると消太くんはまた褒めてるんだぞ、と笑った。
褒めてくれるのはもちろん嬉しい。けれどあの時のことはよくわからない。無我夢中で、あまり覚えていないのだ。
「とにかく、あの場でお前は誰よりもヒーローだった。……良いヒーローになる、きっと。」
「……そう、なのかな。」
ありがとうもそんなことないも言えなかった。この上ない賛美のはずなのに。自分に自信もなければそんなことを言ってもらえる価値も感じられない。きっと怒られるから言わないけれど。
信頼してくれているとわかる消太くんの視線が眩しくて、私はそっと目を逸らした。