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「瀬呂ちゃん、なまえちゃんをお願いできるかしら。」
「あ、ああ……。いや、やっぱ障子変わってくれ。」
「ああ、構わないが……大丈夫か。」
「悪い、手震えてる。安全に運んでやれそうにない。」
「瀬呂ちゃん……。」
目の前の彼女にいつもの笑顔はなく、全身血だらけで死んでしまったのかと思うほどの怪我を負っている。顔も真っ青。情けないことに俺はみょうじを直視できなかった。
あの化け物みたいなやつに一人で突っ込んでいくなんて思わなかった。柔らかく儚げな印象の彼女が、俺が連れていかれないようにわざと手を離し命を懸けてみんなを助けようとするなんて。正直想像もしていなかった。心臓が止まってしまうかと思った。
だって普通怖いだろ。みんな本物の敵に遭遇するのだって初めてで、あれほどはっきり殺意向けられて。立ち向かっていける方が異常だ。
それでもみょうじは何の躊躇もなく、怯みもせずに先生を助けた。梅雨ちゃんを助けた。俺なんかが思っているよりずっとみょうじは強かった。
敵と対峙するのが初めてで、好きな子が殺されてしまうかもしれない非常事態に加勢することすら叶わなかった俺とは大違いだ。
もっとちゃんと、強くならなきゃ駄目だ。守れるように。今度こそは、俺の手を掴んでもらえるように。
その後はもう、何ていうかオールマイトがすごかった。怒涛のパンチででかい敵を倒した。先生たちも駆けつけてくれた。
敵連合は逃げちまったけど俺たちはようやく肩を撫で下ろすことができた。それと同時に血だらけで運ばれていったみょうじのことが思い出され、息が詰まった。誰かに無事だと言ってほしかった。
「相澤先生は……。」
警察がやってきて制圧された敵が連行されていく。特に怪我のなかった俺たちが教室に行くよう指示される中容体を聞いたのは梅雨ちゃんだった。
刑事さんが電話で病院に確認を取ってくれ、その詳細を教えてくれる。
「"両腕粉砕骨折顔面骨折……幸い脳系の損傷は見受けられません。ただ眼窩底骨が粉々になっておりまして……眼に何かしらの後遺症が残る可能性もあります"……だそうだ。」
後遺症という言葉にその場の温度が下がる。身を挺して俺たちを守ってくれた相澤先生。回復を祈るしかない現状がどうにも歯痒い。
「あの、みょうじはどうですか。」
意外にもそれを聞いたのは轟だった。相澤先生もぼろぼろだったけどみょうじも負けず劣らずだ。みんな気になっている。
「"みょうじさんは右手右足骨折と……脳震盪も起こしていました。出血も多かったですが、とりあえずは命に別状はありません。頭を強く打っているので検査は必要になってきますが、障害などは遺らないと思います"……ということだ。」
その場の全員が深く息を吐いた。どうやら13号も大丈夫らしい。
誰も。誰も死ななかった。相澤先生も、みょうじも生きてた。その事実に泣いてしまいそうだった。