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HRは混沌を極めていた。学級委員を決めるのにほぼ全員が立候補したからだ。さすがヒーロー科。
「これは投票で決めるべき議案!!!」
という飯田くんの一声で投票をすることになったのだけれど誰に入れようかな。入学してから圧倒的にリーダーシップを発揮しているのは間違いなく飯田くんだよね。百ちゃんも適任だとは思うけど。うーん悩む。
「一票、一票入っている……!」
私です。そんなに喜んでもらえるとは。
「自分で入れたんじゃねえのか?」
「ぼ、俺は他の人に投票した……!」
「何がしたいんだ飯田……。」
投票の結果、委員長は緑谷くん、副委員長は百ちゃんに決定した。私が入れた飯田くんにはならなかったけど、納得の結果だ。私にも何故か一票入ってた。誰が入れてくれたんだろう。
所変わって食堂へ。ランチタイムは相変わらず混んでいる。いつもの面子に三奈ちゃんも加わってかなり大所帯だ。
「ねね、轟となまえって同中?」
「え?いや違うけど。」
「そうなの?いや前に話してたとき顔見知りっぽかったからさあ~。」
三奈ちゃんに聞かれて素直に首を振る。戦闘訓練の時のことかな。どうやら彼女も透ちゃんと同じく恋バナ好きらしく意味深な視線を送ってくる。
「あー、そう、だね。なんていうか、幼なじみ?父親同士に親交があって小さい頃よく遊んだの。でも今はほとんどしゃべらないから仲良いって感じじゃないんだけどね。」
「まあ、仲良くは見えなかった。」
響香も興味はあるようでうどんをすすりながら話に乗る。そんなに注目されてたのかあ。焦凍くん目立つからな。
「でもお似合いな気すんな、美男美女って感じでよ!」
「あはは、切島くんそれ轟くんには言っちゃ駄目だからね。」
「え、マジか。気ぃつけるわ。」
絶対怖い顔で凍らされるからね。これも人命救助です。
「轟と付き合ってないってことはみょうじ今フリーなん?」
「えーとナンパはお断りしております。」
「ナンパじゃねえって!あわよくばってのはあるけど!」
「あるんかい。」
響香のドックンが飛んでくる。痛そう。上鳴くん涙目。
「単純な興味!気になるだろお、みんなも。なあ瀬呂!」
「ん?んー、そうね。」
黙って食べていた瀬呂くんはちょっと考えたあとこちらに目線を合わせた。
「彼氏、いる?」
な、な、何か。色気。色気が。みんな気にならないのだろうか。私、急に心臓痛い。
「い、いないです……。」
「そっか、よかった。」
顔色変えないよう必死だ。耳が熱い。切島くんはそのまま普通にごはん食べてるし上鳴くんはよっしゃ!と何故か喜んでるけど、響香と三奈ちゃんは何か言いたげに私と瀬呂くんを見ている。私もパニックだからその視線やめて!
「瀬呂、アンタなんか……すごいわ。」
「ね、何か見方変わった……。」
「ん~?」
本人はいたって飄々としている。いやほんと説明求む瀬呂くん。
『ウウーーーー!!!!』
私がもやもやしていると突然けたたましいサイレンが鳴った。
『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんはすみやかに屋外へ避難して下さい。』
「セキュリティ……何!?」
「わかんないけど避難すべき?」
「とりあえず食堂から出た方がいいかも。」
みんなで急いで出口の方に向かうけれど人がすごい。もうもみくちゃだ。
「あっ、響香……!」
「なまえ!」
人の波が押し寄せてきて響香と離れ離れになってしまった。というかみんなどこ。あっちもこっちも人で息ができない。
「う、」
どこの誰かわからないけどエルボーやめて。やば、このままだと怪我する。浮いた方がいいのか?いやここで風起こすわけにはいかない。
「みょうじサン大丈夫?」
「お、あ。瀬呂くん。」
長い手が伸びてきて体を支えてくれる。何とか壁際まで移動できた。
「やー、これやべーね。」
「ほんとに。めちゃくちゃ助かりました。ありがとう。」
「いーってことよ。」
さっきより息がしやすい。恐らくあまり他の人に圧されないよう瀬呂くんが庇ってくれているのだろう。本当にありがたい。けど。
その代わりに瀬呂くんとはめちゃくちゃ密着してしまっています……!
瀬呂くんの胸のところに自分の顔がある。というか色々密着してる。何ていうかこう……色々。
まずいまずいドキドキしてるのばれるどうしよう。瀬呂くん良い匂いするし。
いやでもさっきも余裕綽々みたいな顔してたし瀬呂くんは気にしてないはず。私も平常心、平常心。
ちらりとその表情を見上げると、ばっちり目が合ってしまった上顔もかなり近かった。若干赤くなりながらふいと視線を逸らされる。照れてる。
その反応は聞いてませんけど……!余計心臓はやくなった気がする。
「……ワリ、もうちょいこのまま我慢して。」
普段より近い距離で彼の声がダイレクトに伝わる。もうこくこくと頷くことしかできない。しゃべったら爆発する気がする。
誰でもいいからこの状況何とかして!と思ったその時。
「大丈ー夫!!」
え、飯田くん非常口みたいになってる。密着していることを忘れて一瞬ぽかんとしてしまった。何故か頭上に浮かんでいる彼が群衆に向かって注意を促す。
「ただのマスコミです!なにもパニックになることはありません大丈ー夫!!」
はっきりと通る声。わかりやすく安心する言葉。みんな段々と落ち着きを取り戻していく。
「ん、ふふっ……ふふ、あははは。」
「お、どーした飯田がうけたか。」
「いやほんと、ふふ、ツボに、っあははやばい駄目だこれ……!」
「爆笑してんの初めて見たわ。」
しばらく2人で笑っていた。体が離れたあとも気まずくなることなく、普通にいつも通りだった。ありがとう飯田くん。