戦闘訓練
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「失礼します。」
「おや、アンタかね。」
「お久しぶりです、リカバリーガールさん。」
父にはたまに現場に連れて行ってもらっていた。もちろん個性使用はできない。けれど生の現場を体験しておくことはヒーローになる上でとても重要だと言われ、邪魔にならない場所から見学していた。リカバリーガールさんや他のプロヒーローたちとはそこで知り合った。
「個性の使いすぎだね。」
「全くその通りでございます……。」
「父親よりも反動が大きいんだから、ちゃんと考えて使いんさい。」
「はい……。あの、緑谷くんは。」
先ほど片腕を損傷して運ばれた彼の名前を出すと、リカバリーガールさんは苦い顔をした。
「あっちのベッドで寝とるよ。短期間でこんなに怪我をして……わたしゃ心配でならんよ。」
「昨日も指折ってましたもんね……。」
「ほれ、アンタも人の心配しとらんで横になりんさい。」
「はい。」
緑谷くんはどうやら最近個性が発現したらしい。急にあんな強い個性を持って扱いきれなくて、使うたびに大怪我を負う。
それほどまでにヒーローになりたいのだろうか。意志が強い、なんてレベルじゃない。
そういえば私は何でヒーローを目指したんだっけ。
「ちゆ~!」
「わああ。」
リカバリーガールさんの治療方法全然慣れないんだよな。毎回びっくりする。そのあとはしばらく寝ててもいいと言ってもらった。ずっと気持ち悪かったから助かった。
「ほれ、もう大丈夫だよ。多少だるさは出るけどね。ペッツ食べてお帰り。」
「ありがとうございます……。」
起きた時にはもう授業は終わってるみたいだった。ペッツをもぐもぐしながら保健室の扉を開ける。まだ若干ふらふらするなあ。
「うわあ!?……あ、何だみょうじ少女か。」
「オールマイト。」
そこにはトゥルーフォームのオールマイトがいた。この状態なの久しぶりに見た。
父の現場について行ったとき偶然この姿を知ってしまった。その時は私もオールマイトもめちゃくちゃ焦ったけど絶対秘密にすると約束した。
「大怪我をしてしまった緑谷少年の様子を見に来てね。いやはやそれにしても驚いた。」
「緑谷くんベッドで寝てるみたいですよ。」
「そうかい。君も今日はゆっくり休むんだよ。戦闘訓練は見事だった。」
「ありがとうございます。それじゃあ失礼しますね。」
言い訳じみているオールマイトの説明に首を傾げる。別にどんな理由で保健室に来てもいいんじゃないだろうか。
あれ、そういえば緑谷くんに会うのにトゥルーフォームでいいのかな。彼の目が覚めたら急にマッスルフォームになるのかも。面白そう、見たい。緑谷くんの超パワーもオールマイトに似てるし、気にかけてるのかもしれない。
ゆっくり廊下を歩いていると放課後になってるのに教室が何だか騒がしい。どうしたんだろう。
「おー、来た来た!」
切島くんが出迎えてくれた。何か、ほぼみんないる?焦凍くんと爆豪くんはいないか。
「親睦深めるついでに訓練の反省会してんの。みんななまえのこと褒めてたよ。」
「おわあ、恥ずかしい。」
戦ってる響香見たかったなあ。自分以降の訓練は爆睡で見られなかった。悔しい。
「みょうじすごかったよなあ!」
「あの轟相手に勝っちゃいそうだったもんね!」
「てか戦闘慣れしてねえ!?」
「さすがNo.4ヒーローの娘!って感じだよなあ。」
「強個性!」
一斉に褒められて面食らう。
「いやそんな。結局キャパオーバーでダウンしちゃったし全然すごくないよ。でも、確かに個性に関しては父に感謝しなきゃだね。」
「や、強個性だし親父さんもスゲーんだろうけど、みょうじが強いのはみょうじが頑張ってるからじゃん?」
「え。」
「まず地の体力がちがうよね。」
「そう、かな。」
「筋トレとかしてんの?体の使い方うまいよな。」
「一応……。体術全般は教えられてるから。」
会話がどんどん進んでいって流されてしまったけれど、瀬呂くんの言葉が頭から離れなかった。
強いと認めてくれた上、頑張ってると言われた。こんなことは初めてだ。さすがヒーローの娘だと持て囃されることはあっても、その奥に努力があることを指摘してくれる人はいなかった。
強い個性が遺伝したから、人生勝ちだとよく言われた。強くてニューゲームだと、ずるいと陰口を叩かれることも一度や二度じゃなかった。
隣を盗み見ると瀬呂くんは何でもないみたいな顔をしていて、彼にとっては当たり前に出てきた言葉なのだとわかる。何故だかうっかり泣いてしまいそうだった。