戦闘訓練
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講評では飯田くんがべた褒めされていた。爆豪くんも緑谷くんも私怨むき出しでめちゃくちゃやってたし、お茶子ちゃんはナイスホームランだったけど屋内戦のヒーローとしては少々乱暴な行為だった。飯田くんだけが役に則り正しい反応をしてた。
「次はBチーム対Iチームだ!準備はいいかい?」
「!」
いやあ、いつかはそういうこともあると思ってたけどこんなに早く来るとは。余計に緊張してきた。
とりあえず作戦会議だ。
「私は、気圧による空気操作ができる。簡単に言えば風を起こしたり空気の塊を相手にぶつけたりできる。風圧で動き封じたりも可能かな。」
「かなり汎用性高いね。」
「めちゃくちゃ心強い!」
2人の個性も教えてもらう。尾白くんは尻尾を使った戦闘班。透ちゃんは索敵・攪乱と奇襲ってとこかなあ。
「あとこれは予想だけど、轟くん多分炎使わない。」
「え、どういうこと?」
「詳しくは言えないけど、多分そう。」
私の曖昧な濁し方に、2人はちょっと不思議そうだ。ごめん。
「なになに!?なまえちゃんイケメン轟くんと知り合いなの?」
「あー、父親同士が仲良かったから。ちょっとね。」
「らぶな話!?」
「らぶな話ではないです。」
透ちゃんは恋バナが好物らしくきゃっきゃと詰め寄られる。尾白くんが気まずそうだ。そして私も気まずい。
「あと戦闘始まってすぐのことなんだけど、」
「……なるほど。それなら行けそうだね。」
「私も!本気だす!」
「おああ、透ちゃん大丈夫!?」
ポイポイと手袋とブーツを外す透ちゃん。ほぼ全裸の状態から完全に全裸になってしまった。年頃の女の子のメンタルじゃない。
「というか尾白くんが大丈夫?」
「いや、まああの。うん。」
やっぱ大丈夫じゃない。思春期にこれは刺激強すぎ。
スタートの合図が鳴った。いよいよだ。緊張するけどこっちのチームの雰囲気は決して悪くない。できることをやろう。
焦凍くんとこんな風に対峙するのは初めてで、正直勝てる気はしてない。それでも。
「っ来るよ!」
私は人より少しだけ彼のことを知っている。
開始すぐにパキ、という音が聞こえてあっという間に建物は氷に包まれた。わあ、ほんとに一瞬で終わらせるつもりだったんだ。
尾白くんと透ちゃんの下に空気を滑り込ませ、体を一瞬浮かせる。そう簡単に2人の足は奪わせないよ。念のため高さ上げといて良かった……!
「手応えねえと思ったら、みょうじか。」
「申し訳ないけど、私がいるチームで短期決戦は愚作じゃないかな。」
空気の塊を作り階段のようにして自分も宙に浮かぶ。
「2人ともあとは元の配置で!核お願いします!」
「任された!」
「りょーかい!」
建物に入ってすぐのところで待ち構えて、3人の無事を確認してから各々の配置につく。私は1階で焦凍くん。2人は4階で核を守りながら障子くんと戦う。
恐らく障子くんは索敵班だ。体格も大きいから近接も強そう。だけどその辺は透明な透ちゃんと武闘派の尾白くんなら何とかしてくれるだろう。あとは少しでも勝手を知ってる私が焦凍くんを止める。制限時間まで粘ればこっちにだって勝機はある。
「よそ見すんなよ。」
鋭い氷壁が飛んでくる。とりあえず風で粉砕して体勢を立て直す。空中にいる分、こちらが有利なはずだ。
「よそ見してるのはどっちなのかな。」
いっそのこと部屋から追い出してしまおうと風を出口の方向に目一杯集中させるけれど氷壁に阻まれる。障子くんがすり抜けて階段の方に向かったのが見えた。でも深追いはしない。彼が4階にたどり着くのは作戦のうちだ。
うーんやっぱり氷はやりづらいな。炎の方が相性がいい。
焦凍くんはもう一度建物全体を凍らせようとしてるみたいだけど、そうはいかない。
「っ!」
ピンポイントで彼の左に強い風を送り手元を狂わせる。
「味方がいるんだから、もう一度凍らせるのはまずくないかな。」
「最後に勝てば問題ねえ。」
「……震えてるよ、轟くん。」
右で体温調節すれば、きっと今より楽に氷の規模も上がる。彼がそうしないのをわかってて攻撃してる私はかなりずるい。
2人で戦っているはずなのに目が全然合わない。もうあの頃に戻れることはないのだと、突きつけられている。
「左ばっか狙ってんのか。」
「い、今私は敵なので……。」
そりゃばれてるか。でも私も勝たなきゃだから。
「お前ももう、大分個性使ってんだろ。」
言わんとしていることがわかる。これほど持続して個性を使ったことはなく、かなり頭がくらくらしてきた。こうなったらもう我慢比べだ。近接だとかなり不利だし多分テープは巻けない。
「威力は落ちても、お前に個性を使わせ続けることはできる。」
氷の塊が次々に飛んでくる。自分の体を空中に維持しながら全ての氷を避けることはなかなかに困難だ。やばい、このままだと防戦一方。これ以上使うとまずいけど、焦凍くんの周りの空気を圧縮できればなんとかなるかな。
しかしそれほどうまくはいかない。風圧で完全に動きを止めたいのになかなか氷をとらえきれない。言い方はあれだけど地面にちょっとめり込んでてほしい。
焦凍くんは私の焦りなどお構いなしに氷壁を出してくる。彼の体ももう大分きついだろうに。
制限時間まであとどれくらいだろう。このままじゃ焦凍くんの思惑通り私は倒れる。何とか会心の一撃食らわせたい。これはもう近接苦手とか言ってられない。
「……!」
焦凍くんの氷を砕いて風に乗せ、目元めがけて飛ばす。さっき爆豪くんもやってた。目くらましだ。
一瞬怯んで動きが止まる。よし。攻撃が止んだ隙に一気に距離を詰め彼の右側に向かって思いっきり蹴りを入れた。
「っ!」
ちゃんとふらついてくれた。この機会を逃す手はない。再び彼の頭上に上がり、よろけた体を上からの風で抑える。そのまま地面に叩きつけられた姿はかなり可哀想だったけど、私が倒れることなくこのまま抑え込めたら勝てるはずだ。
左側を攻撃しなかったのは、氷で動きを止められたら困るから。普段使っていない方は咄嗟に反応が遅れる。そこを狙った。ずるいと言われようとも今私は敵なのである。
ああでもやばい。さっきから眩暈が止まらない。何か血の味もしてきた。
「……っあ、」
一瞬意識が落ちかけた。そのチャンスを彼が逃すわけない。目の前には鋭い氷。あ、やば。当たる。
「ヒーローチームWINNN!」
「あえ?」
オールマイトの声に驚いて思わず個性解除してしまった。あれこれ、痛いやつ。
「……何してんだ。」
「ごめん。ありがとう。」
焦凍くんが素早く個性解除してついでに受けとめてくれた。よかった、地面に叩きつけられずにすんだ。すぐに降ろしてもらうけどもうくらくらだ。立っていられなくてその場に座り込む。その時存在を忘れていた無線が鳴った。
「ごめーん!なまえちゃん!」
「ごめん、障子に核奪われた。」
あの2人をもってしても。障子くん、忍者……?
「いや、私もかなり限界だった。個性使い過ぎで轟くんに突破されるのも時間の問題だったしどのみち詰んでたかも。」
あとで反省会だね、と3人でため息を吐く。講評の前にもう一度焦凍くんにお礼を言おうと振り向いたが、もう彼の姿はなかった。
「みょうじ、鼻血が出ている。」
「あ、ほんとだ。」
上から下りてきた障子くんたちと合流して講評に向かう。眩暈が止まらないので尾白くんに肩を貸してもらっている状態だ。情けない。完全に個性の使いすぎ。コスチュームを汚すわけにもいかないのでとりあえず手で鼻を押さえる。
「なまえちゃん無理させちゃってごめん~!」
「ほんと、不甲斐ない……。」
「いやいや。やっぱ勝手知ってる方が戦いやすいし、あとはもう単純に2人が強かったよね。」
「ほんと障子くん強すぎ~!」
「いや、轟が地面を凍らせてくれてなかったらわからなかった。」
「それはそうかも。まさかあそこで滑って転ぶとは思わなかった……。」
やっぱり氷厄介だったなあ。炎が加わればもっと厄介だったけど。
「講評タイムだ!!!」
テンション高いなあオールマイト。頭に響くのでもうちょっとだけ抑えてほしい。
「まず敵チーム!何故負けたと思う!?」
「2対1だと思って少し油断しました……。」
「それはあるね!下が氷で悪条件だった分やはりもっと慎重になるべきだった!あとは葉隠少女、もう少しヒーローを上手く撹乱できたかもしれない!」
「ブーツやっぱ履いとくべきだったかな~。」
4階は4階で大変だったんだろうなあ。確かに裸足で氷はきつい。
「みょうじ少女はどう思った?」
「私は、もっと近接戦の練習をしなくちゃと思いました。空中戦だとどうしてもキャパシティに限界が来るので……。あとは完全に小型無線の存在を忘れてました。もう少し連携がとれたと思います。」
「うん!自分の分析がそこまで出来ているのはいいね!近接戦の練習と、個性の上限を向上することを考えてみよう!」
「はい。」
「今回勝ったのはヒーローチームだが、より連携が取れていたのは敵チームだった!ヒーローはチームアップが多く協調性は必須だ!諸君もよく考えてみてほしい!」
焦凍くん、障子くんも凍らせるつもりだったもんね。
「みょうじ少女、君はこのあと保健室に行っておいで。」
「あ、はい。」
いつまでも鼻血出してるわけにもいかない。みんなの訓練も見たかったなあ。