ケッコンカッコカリ (長編9頁)
「……と、いうわけなのだよ」
「クッハ!それでおたくらあんなに強かったのかよ!箱学っていつもドライなのに、今回はやたらチームワークいいなって皆で話してたっショ」
レースを終えて、その日の夜に東堂は巻島と電話している。
箱学は大会新記録のタイムを叩き出し、ぶっちぎりの独走で優勝を果たした。
「しっかし……箱学のエーススプリンターとエースアシストが結婚ねぇ……。おたくら勝つためにはホント何でもするんだなぁ。そんなのどこも真似出来ないっショ」
巻島は溜め息をつく。
「それでな、巻ちゃん。今度の日曜日に披露宴をするのだよ。良かったら総北の皆も来てくれると嬉しいのだが。土産もたくさん用意するぞ」
「披露宴ねぇ。まさか高校生のうちにそんな経験するとは……。まぁ、うちの小野田なんかおたくの荒北に相当世話になってっからなぁ。きっと喜んで出席すると思うぜ」
「おお、眼鏡くんか。会えるのを楽しみにしていると伝えてくれ」
「うちの連中にこの話したら……クッハ!きっとひっくり返って驚くんだろうなァ!ケッコンカッコカリなんて理解出来ないっショ」
「いやぁ、しかしな巻ちゃん……」
東堂は珍しく少ししんみりして言う。
「あの二人の幸せそうな姿を見ているとな。結婚ってやはり良いものだなとしみじみ思うのだよ。羨ましく感じてしまう。フフ……」
それを聞いて巻島は少し面食らったが、優しい声でこう言った。
「東堂……。お疲れさん」
「え?」
「オマエのことだ。どうせ今回もその二人をくっつける為に、あちこち駆けずり回って世話焼いたんショ?なんだかんだ言って、面倒見いいからなぁオマエは。大変だっただろうに。でもまァ、レースも優勝したし、大成功で終わって良かったっショ」
「ま……巻ちゃん……」
初めて労いの言葉をかけてもらい、東堂は感激して涙が溢れてきた。
「ありがとう巻ちゃん……。それでな。考えたのだが」
「ん?」
「オレと巻ちゃんもケッコンカッ…」
ブツッ!
ツー、ツー、ツー、ツー。
「……」
ピッ。
東堂は電話を切った。
「……フッ。巻ちゃんめ。照れているのだな。可愛い奴だ」
電話を充電器に置き、東堂は大きく伸びをした。
「さて、披露宴の準備に取り掛かるか。結婚式は急拵えだったが、披露宴は盛大に完璧に開催しないとな。忙しくなるぞ!」
東堂もいつか、幸せな結婚が出来ますように……。
おしまい