ケッコンカッコカリ (長編9頁)
結婚式を無事終え、寮へ帰ると東堂が二人を手招きした。
「今日からオマエ達の部屋はここを使うのだ。荷物はまた改めて移動させる」
それは通路の一番奥にある二人部屋だった。
ドアにはハート型の表札が掛けてあり“はやと&やすとも”と書いてある。
「えっ!」
「ツインルーム?」
「夫婦になったのだ。当然だろう。それにツインではない。ダブルだ!」
中を見ると部屋の中央にシングルベッドを2台くっ付けて設置してあった。
シーツの上には中庭の花壇からちぎって来た花がパラパラとちりばめられている。
「げェっ!」
「なんていやらしい……」
「何がいやらしいものか!オマエ達わかってるのか?今夜は初夜なのだぞ。夫婦として最初の重要な営みだ」
「しょッ……!」
「初夜!」
二人は真っ赤になっている。
「全く何から何まで世話の焼ける奴らだな。さあ、新居へ入るがいい。オレが決して誰もこの部屋へは近付けさせん。安心して営め!」
「安心して営めって……」
戸惑っている二人を部屋へ押し込み、東堂はドアを閉めた。
「……」
「……」
部屋へ入り、赤面したまま見つめ合う二人。
「し、新開、オレ……」
「ん?」
荒北があたふたして言う。
「オレ、DTなんだ。キスもさっき式でやったのが初めてで……。だから、その……」
「靖友……」
「……優しく……してネェ……」
荒北は真っ赤になってモジモジしている。
「オレも同じだよ靖友。DTだし、さっきのがファーストキスだ」
「え?嘘だろ?オマエが?」
驚いて顔を上げる荒北。
「本当だよ。オレのことどんなイメージで見てたのか知らないけどさ。オレはこういうこと、凄く好きな相手としかしたくないって昔から思ってた」
「新開……」
「靖友は凄く好きな相手だから、オレ……するよ」
新開は荒北を抱き締めた。
「新開……」
「靖友、好きだよ。凄く好き。これからもずっとずっと一緒にいたい」
「うん。オレも……好き」
二人は口づけを交わした。
「散れっ!お前らー!散れーっ!近付くなーっ!」
廊下から東堂の怒鳴り声が聞こえた。
驚いて離れる二人。
「ちっ。落ち着かねーなァ」
「でも尽八には感謝してるよ。ホント、最高にいい奴だ」
「あァ、全くだ。東堂にも福ちゃんにも、今度改めて何かお礼しねーとな」
「うん。とりあえず、オレ達の幸せそうな姿を見せるのが一番の恩返しだ」
「だな」
二人はベッドへ入った。
枕元に小瓶が置いてある。
「なんだコレ。……ワセリン?」
「うわ、いやらしい」
新開は赤面する。
「いやらしい?ワセリンが?コンドームが置いてあンなら解るけどヨ」
「さすがに急過ぎてコンドームは準備出来なかったみたいだな」
「ワセリンって何に使うんだ?」
「知らないのか?靖友」
「?」
新開はワセリンの蓋を開け、中の軟膏をたっぷり手の平に取った。
「これを……」
新開は荒北を抱き寄せ、手を後ろに回した。
「こうして……」
「えっ?」
「ここに……」
「うひゃっ!」
「こうやって……」
「あっ!あァァーっ!」
「すると、だんだん……」
「アアッ!アアアッ!アアアアー!」
二人の初めての夜はこうして更けていった。
翌朝、部員達は一人残らず寝不足だった。