ケッコンカッコカリ (長編9頁)





次の日の夕食後。

談話室は寮の3年生達で賑わっている。

 

そこへ剣道部が入ってきて皆に声をかけた。

 

「今からラグビー部んとこで新作のAV観賞会やんぞ!定員は10名だ!」

 

それを聞いてみんなウオーッと談話室を出ていく。

定員は10名と言っているのに明らかにそれ以上の人数だ。

 

「チャリ部も早く来いよ!」

 

親切に声を掛けられたが、誰も席を立たなかった。

 

 

談話室にチャリ部の3年生4人だけが残る。

 

 

「……」

「……」

「……」

「……」

 

沈黙が流れる。

 

 

最初に沈黙を破ったのは新開だった。

 

「行かないのか靖友」

「あァ?」

「いつも真っ先に走ってってたじゃん」

「……っせ。オメーこそ行って来いヨ」

「オレはいいよ」

「ハン。女子とヤりまくって赤い玉でも出たか」

「なんで赤い玉なんて言葉知ってんだよ!」

「オメーだって知ってんじゃねーか!」

「待て待て待てぇい!!」

 

東堂が二人を止める。

 

 

「わざわざしなくてもいい喧嘩をするな!二人共見に行かない、それで話は終わりではないか!世話が焼けるな全く!」

「……」

「……」

 

仲裁に入ったが、二人共まだ睨み合っている。

 

 

「……それに女子とヤりまくってなんかいないよ!いつそんな暇があるんだよ!」

「暇があったらヤんのかヨ!」

「自慢じゃないけどオレはまだD「やめろ!二人共!!」

 

福富が怒鳴った。

 

 

「寿一……」

「福ちゃん……」

 

東堂では効き目が無かったが、さすがに福富に怒られて二人は黙った。

 

 

「二人共オレの部屋へ来い!……東堂も一緒に来てくれ」

 

福富は席を立ち、談話室を出て行った。

 

二人はビビって萎縮している。

 

「ホラ!さっさと行くのだ!」

 

東堂は二人を急き立てて福富の部屋へ連れて行った。

 

 

 

 

 

 

福富の部屋で、二人は並んで正座させられている。

 

福富は二人の正面で足を広げて椅子に座り、腕組みをしている。

 

東堂はドアにもたれて立っている。

 

どんなお説教が待っているのか。

二人共ビクビクして冷や汗が頬をつたう。

 

 

 

福富は落ち着いた声でこう言った。

 

 

 

「オマエ達。夫婦になれ」

 

 

 

「……ハァ?」

「め……おと?」

「フク……」

 

福富の発言に二人だけでなく東堂まで面食らっている。

 

 

 

「なに言ってんの福ちゃん?」

「……あ、もしかして文化祭の出し物かなんか?」

 

 

「オマエ達、好き合っているんだろう」

 

「えっ!」

「え……!」

「うわぁ、直球だよフク」

 

驚く二人に、頭を抱える東堂。

 

 

「レースはもう来週なんだ。早くまとまってくれなければ困る。明日の晩、結婚式を行う」

「早い早い早いフク!」

 

「けっ……?」

「結婚?」

 

慌てる東堂に、呆然とする二人。

 

「内輪だけでやる。チャリ部だけだ。とりあえず式だけ済ませ、披露宴はレース後に改めてゆっくり開く」

「フク。その決断力と行動力、使いどころ間違ってるぞ」

「勿論、正式な結婚では無いことぐらいオレもわかっている。これは仮。ケッコンカッコカリだ!」

「いや、そうキリッと言われてもだな」

「オレとオマエは仲人だ」

「聞かんか話を」

 

 

 

「……」

「……」

 

新開と荒北は唖然として顔を見合わせるだけだった。










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