ノロケ話 【連載中】





ピンポーン。



夜8時頃。
呼鈴が鳴った。


「はーい」


誰だろう。
荒北なら鍵を持っているはずだ。


上半身裸のままリビングで寛いでいた新開は、慌ててTシャツを被り、玄関へ向かった。



ガチャ。

ドアを開けると……。






「隼人くん!」


目の前に笑顔で立っていたのは、悠人だった。




「ゆ、悠人?」

「いやー、終電逃しちゃってさー」



弟の突然の訪問に驚いている新開の脇をすり抜け、悠人は勝手に靴を脱いでドカドカと上がり込んだ。



「終電て、まだ早いじゃないか。てか、寮の門限……連絡したか?」

「うん!外泊許可もらった!」

「外泊?」



ドサッ!

悠人はリビングへ入り、ソファに腰掛ける。



「リビング広いなぁ。やっぱルームシェアだといい物件借りられるんだねー。寮の部屋狭いしさー。オレも卒業したら誰かとシェアしよっかなー」

テーブルの上のウナギパイを勝手に頬張りながら、リビング内を見渡す。




「悠人……。来るんなら前もって連絡してくれないと困るよ」

キッチンで湯を沸かしながら、新開は溜め息をつく。



荒北は困惑するだろう。
なんとか荒北がバイトから帰ってくるまでに追い出さなくては。

新開はそう考えていた。




「だって隼人くん、マンションに遊びに行きたいっつってもいつもダメダメってさ。靖友くんと一緒に住んでる部屋、一度見てみたかったんだ。今後の参考に」






新開は箱学卒業と同時に、荒北と一緒にマンションへ引っ越した。

それ以来、悠人だけでなく誰一人として部屋へ招いていない。


それには、理由があった ──。






「2LDKでしょ?隼人くんの部屋と、靖友くんの部屋と、共同のリビングキッチンか。ゆったり暮らせていいなぁ」


悠人も卒業後は実家に戻る気は無いらしく、一人暮らしをする予定だ。

新開と荒北のようにルームシェアをすると、同じ予算でもワンルームよりランク上の部屋が借りられ、更に生活コストも安い。


「オレも箱学に居るうちに、一緒に暮らしてもいいってぐらい気の合うダチ作っとくかー」


悠人は兄のマンションをすっかり気に入ったようだ。
本気で参考にしている。



「寮を経験すると集団生活の基本マナーを学べるからな。今のうちに生活習慣や金銭感覚が自分と同じ友達を観察しておくといい」

「なるほどねー」




新開は温かいココアを淹れ、振り向きながら言った。


「靖友バイトで疲れて帰って来るからさ。おめさんもこれ飲んだらおとなしく帰っ……」





ソファに悠人の姿が……無かった。






「悠人?」


キョロキョロとリビングを見渡す新開。






「……ヤバイ!!」



新開は慌ててリビングを飛び出した。








「……隼人くん……」



悠人は廊下の先にある扉を開け、中を見て立ちすくんでいた。


その部屋は、寝室だった。









「なんで……ダブルベッドなの?」



















(つづく)







1/1ページ
    イイネ