親善試合 (短編3頁)





荒「……」


頬を赤らめ、ポーッとなって新開の食べる姿についつい見惚れている荒北。




黒「……荒北さん?」

黒田はいち早く荒北の異変に気付いた。


泉「荒北さんが……」

黒「荒北さん!どうしたんスか!手が止まってますよ!」


荒「ア?……えっと……」


黒田の声に一瞬反応するが、新開に目を奪われたまま動けない荒北。



泉「ダメだ!ユキ!荒北さんを引き摺り降ろせ!ボクが代わる!」

黒「よし!」

黒田は慌てて荒北の両脇を抱え、選手用ボックス席から引き摺り出す。
すぐに荒北のゼッケンを剥ぎ取った泉田が入れ替わった。



多少のタイムロスはあったが、試合は続行された。



黒「なにやってんスか荒北さん。顔真っ赤にして」

荒「ウ……」


黒田に指摘されても、荒北はずっと新開の食いっぷりを見つめ続けていた。







金「そこまで!試合終了!」


30分が経過し、金城の号令で全員が食べるのを止めた。




各テーブルの皿を数える。




金「総北、82枚!箱学、93枚!よって、箱学の勝利!!」


箱学「やったー!」
総北「しょぼーん」






レジでクレジットカードを出して支払っている巻島。

巻「きっとこうなると思ったっショ……。しっかり取り立ててやっからなぁ!!」

鳴「ひーーー!」
田「もう食えねぇ……」





金「いい試合だった。次はきっと負けない。福富!」

福「オレ達は強い。いつでも来い。金城!」

店の外で固く握手を交わす両主将。




親善試合を終え、一行はそれぞれ帰路に着く。




新開は、駅まで悠人を送る。


新「今日はありがとうな悠人。おかげで助かったよ」

悠「楽しかった!お腹いっぱいになったし!兄弟力を合わせて勝てて嬉しかったよ!」


満足げな悠人を見て微笑む新開。


悠「でもまさか途中で靖友くんがリタイアするとはね」

新「ああ。どうしたんだろうな突然」

悠「隼人くん……気付いてなかったの?」

新「なにが?」


悠「靖友くん、隼人くんにみとれてたんだよ」

新「……えっ?」


悠「隼人くんの見事な食べっぷりに、目をハートにしてたよ」

新「え?靖友が?オレに?」


悠「完全に惚れちゃってたねあれは」

新「ホントに?悠人、それホント?」


悠「ホントだよ。嬉しいなぁ靖友くん、ちゃんと隼人くんの魅力をわかってるんだ。普通ならドン引きするところなのに」

新「靖友が……」


新開は真っ赤になっている。



新「靖友……。デートに誘ったら……来てくれるかな……」

悠「そりゃ勿論来てくれるさ。……隼人くん、もしかして、デート初めてなの?」

新「……うん」

悠「高校3年にもなって?あんなにモテモテなのに?」

新「だって……今までデートしたいなんて思うほどのコ、居なかったし」


悠「靖友くんとは、デートしたいって思ったの?今」

新「……うん」



悠人はそれを聞いて、深く溜め息をついた。



悠「しょーがないなぁ!オレがデートの仕方教えてやるよ!」

新「ほんとかい?サンキュー悠人!」



新開兄弟は仲良く話しながら駅へ向かった。




まさかの親善試合で生まれた恋。
見事、親睦は深まったようで。













おしまい





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イイネ