お出掛け (長編9頁)★オススメ
適当なコーヒーショップに入った。
「ア。モーニングセットあんナ。オレ、朝まだ食ってねンだ。これにしよ」
寮の食堂は毎日やっているが、寝坊する寮生が多いため、日曜の朝はいつもすいている。
「じゃ、オレも食う」
新開も荒北と同じモーニングセットを注文した。
商品を受け取り、トレイを持って窓際の席に座る。
「オメーも朝メシ食ってなかったン?」
サラダをフォークでつつきながら尋ねる荒北。
もしかしたら、新開も自分と同じように、緊張して食欲が無かったのだろうか。
そう思って探りを入れたつもりだ。
「いや、食堂で食ってきた」
「ハァ?」
驚く荒北。
「ンじゃなんで食ってんだ」
「なんでって、旨そうだったから」
キョトンとして当然のことのように答える新開。
「……」
荒北は、目の前で美味しそうに2回目の朝食をとっている新開を眺め……みるみる頬が赤く染まる。
「くッ」
思わず顔を横に背けた。
……クッソ!
オレぁ、コイツの、こういう、何も考えず何でもかんでも旨そうにパクパク食いまくる、こーゆートコが……!
たまんなく萌え萌えすンだよチクショウ!!
右手で自分の口を塞ぎ、左手は拳を握りしめる。
首まで真っ赤にして、荒北はブルブル震えていた。
「靖友食わねーの?だったらパン……」
「やらねーヨ!」
厚かましくトーストに伸びてきた新開の手を、荒北は素早くガシッ!と掴んで止めた。
「!」
「!」
寮の食堂ではよく見る光景だった。
食いしん坊の新開は、いつも他人の皿からおかずをもらおうとして手を掴まれたり叩かれたりしている。
それと同じ光景の筈だった。
しかし……。
「ア……」
「あ……」
新開の、手を、荒北が、握って、いる。
そのシチュエーションは、今の二人にとって、最早いつもの光景とは全く違う意味合いとなっていた。
「……」
「……」
二人とも顔を真っ赤にして、繋がったままの手を凝視し、固まっている。
パッ!!
ほぼ同時に、二人は手を離し引っ込めた。
「ご、ごめん」
「イヤ……オレこそ」
焦ってモジモジしている二人。
ヤッベ!
つい、いつもの調子で手ェ掴んじまった。
新開の、手……。
ドキドキが止まらない荒北。
靖友に!
手、握られた!
もうオレ、手、洗わねぇ!
一生!
さっきの荒北の手の感触を反芻している新開。
「……」
「……」
二人は大きく深呼吸し、頑張って気を落ち着かせる。
「……」
「……」
恥ずかしくて互いの顔が見れないため、なんとなく店内に視線を移した。
「……カップル客が、多いナ」
「ああ」
他の客に注目し、話題を逸らそうと試みる二人。
カップル客達もみんなモーニングセットを食べている。
「みんな日曜日の朝っぱらからデートなンかね」
「……朝っぱらから、じゃないんじゃないか?」
「エ?」
「きっとゆうべから、一緒なんだよ」
「……」
「……」
「ブッ!!」
「!!」
荒北がコーヒーを吹き出した。
「ゲホッ!ゲホッ!」
「だ、大丈夫かい?」
つまり、今周りにいるカップル達は、みんなラブホで朝を迎えた後だという事だ。
初恋真っ只中の荒北には、この状況は刺激が強過ぎた。
新開も想像した。
ということは、今同じ店でモーニングセットを食べているオレ達も、周りのカップルから同じように思われているとか……!
「……」
「……」
二人は顔を見合わせ、赤面する。
「オ、オレ、もう、出る」
「オレも……」
いたたまれなくなり、まだ食べている途中だったが、二人は逃げるように店を出た。