お出掛け (長編9頁)★オススメ
視線を……感じる。
休憩時間。
教室の自分の席で新開はふと、顔を上げる。
そのまま廊下の方を見やる。
「!」
「!」
廊下に居る荒北と目が合った。
飛び上って驚く荒北。
顔を真っ赤にして、
走って逃げた。
「……」
その姿をじっと目で追う新開も、頬を赤らめている。
最近、荒北とよく目が合う。
今のように荒北が見ている時もあれば、自分が荒北を見ていて視線に気付かれる時もある。
元々女子に人気のある新開だ。
常に複数の女子から熱い視線を投げかけられている。
しかし、そういう視線には全くセンサーが働かない。
探知するのは……荒北からの視線にだけであった。
睨まれているわけではない。
それはわかっている。
明らかに、自分は荒北を……意識していた。
荒北も、自分と同じ想いなのだろうか。
そうだったら嬉しいが、もし勘違いだったら……。
なんせ、男同士だ。
息をピッタリ合わせなくてはならないスポーツのチームメイトでもある。
寮でも毎日一緒に生活を共にしている。
もし、対応を間違えて、関係がギクシャクしてしまったら取り返しがつかないのだ。
慎重にならなければいけない。
このまま、何も行動を起こさず、何も波風を立てず、何も気付かないフリをして、卒業まで現状維持すべきだ。
……本当はそれが正解なのだと思う。
しかし、頭ではわかっていても、本音は全く逆だ。
荒北への想いは日に日に強くなっていく。
目で追っている時間も明らかに増え続けている。
頭の中はずっと荒北のことでいっぱい。
授業も全く聞けていない。
溜め息をつき、胸がドキドキしっぱなしだ。
荒北の気持ちが知りたい。
知りたくてたまらない。
これが、明らかに片想いなら、まだ楽だった。
自分の気持ちは自分だけの胸の奥に仕舞っておけば済むことだ。
しかし荒北の態度を見ていると、脈がありそうに感じる。
だから気になるのだ。
だから期待してしまうのだ。
だからはっきりさせたいのだ。
「靖友……。はっ!」
荒北の名前をつい口に出してしまった。
新開は慌てて周りをキョロキョロと見渡す。
誰も聞いていなくてホッとする。
「ダメだ……。このままじゃ卒業まで精神がもたねぇ」
新開は頭を抱えた。
「ハァハァ」
廊下を全速力で走ってきて、階段室で息を切らせている荒北。
「また……見てンのバレちまった……ヤベェ」
天を仰ぎながら階段に座り込む。
「……ハー」
心を落ち着かせる。
「変なヤツ、って……思われてンだろうな……クッソ!」
見ないよう見ないよう、気を付けているのに、どうしても新開を目で追ってしまう。
荒北も、新開を意識していた ──。
いつからなのかはっきり覚えていない。
新開の、キレイな顔立ち。
凛々しいスプリント。
豪快な食べっぷり。
殴りたくなる程の天然。
どれもが愛しく思える。
まさかこの自分が男に惚れてしまうとは。
今でも信じられない。
だが確実に、日増しに想いは募る一方だ。
新開も自分をじっと見ている時が多いことには気付いている。
もしかしてアイツもオレのことを……。
なんて思ったりもするが、世の中そうそう都合良く出来ているわけがない。
きっと新開は「何か言いたいことあるのかな」と気になっているだけなのだ。
そうに違いない。
「アーー!」
荒北は頭をガリガリと掻いた。
このもどかしい状態はいったいいつまで続くのだろうか。
自分でもどうすれば良いのかわからない。
荒北は気が狂いそうだった。
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