ただ甘えたいだけ (短編2頁)
ぽふっ。
荒北はベッドに座る新開の腰に抱き付いた。
「靖友……」
新開は荒北の背中を優しく撫でる。
「ンフん」
荒北は新開の腰まわりのぬくもりを頬に感じ、気持ち良さそうに鼻から息を漏らした。
「好きだよ……」
新開は荒北が愛しくてたまらない。
「ン~」
荒北は更に強くギュッと抱き締める。
頭を新開の腹にスリスリと押し付けている。
「ははっ。くすぐったいよ」
箱学寮の新開の部屋。
消灯前に恋人と甘ったるいひとときを過ごす。
こうしてくっついているだけで幸せを実感する。
「新開ィ」
「なんだい?」
「頭……撫でて」
「頭?……いいよ」
新開は言われた通り、荒北の頭を優しく撫でた。
「ン……」
撫でられて気持ち良さそうにしている荒北。
そのまま眠ってしまいそうだ。
「新開ィ」
「なんだい?」
「頭ァ、撫でてェ」
「撫でてるよ」
「……」
「……」
ガバッ!
荒北は腕を外し、起き上がって怒鳴った。
「頭じゃねェだろソコぉ!ケツだろーがァ!!」
「頭ばっかりじゃなくて尻も撫でさせてくれよ!!」
「オレぁ頭っつったンだよ!言った通りにしろやゴラ!」
「尻だけじゃないぜ!オレはおめさんの胸も股間も撫でたいんだ!」
「この程度でちんこおっ勃ててンじゃねーよ!」
「おめさんにあんな風に密着されたら勃つの当然だろ!」
グッ!
新開は荒北の腕を掴み、ベッドへ引き倒す。
ドサッ!
「シようよ靖友。シたいよオレ」
荒北にのし掛かり、首筋に吸い付く新開。
「シたくねー!」
荒北は新開を思い切り押し退け、ベッドから逃れる。
「なんでだよ!最近全然ヤらせてくんないじゃないか!オレ我慢出来ねぇよ!」
懇願する新開。
「……もう、イイ!」
荒北は怒って部屋を出て行った。
バタン。
「靖友……」
閉じられたドアを新開は呆然と見つめていた ──。
~廊下~
「靖友がヤらせてくんない!」
東堂は素早く新開の口を塞いだ。
「場所をわきまえんか馬鹿者!」
「ムグー!」
「荒北が何をやらせてくれないって?」
「何でもないぞフク!気にするな!」
「ムグー!ムグー!」
東堂は新開を談話室に引き摺って行った。
~談話室~
「プハーっ!」
「喧嘩でもしたのか?」
新開の口から手を離す。
「してないよ。さっきだって部屋で靖友の方からベタベタしてきたんだ。なのに……」
状況を説明する新開。
「ふむ。ヤらせてもらえないのは何か理由があるのだろう」
「理由って?」
「知るか。……だがわかる」
「どっちだい?」
東堂は思い当たるふしがあるようだ。
「オレも巻ちゃんに拒否られることがよくある。しかし、別に嫌われているわけではないようなのだ。……意味がわからん」
恋人の巻島とのケースを語り出す。
「裕介くんも?だけど好きだったらシたくなるの当然だよな?」
「同感だ。……しかし隼人のとこも同じケースとはな」
どちらのカップルも同じ問題を抱えていたと知って驚く二人。
「はっ!……よもや!」
「何か気付いたのかい?」
東堂は青冷める。
「オレは……巻ちゃんにとってただの……キープ?」
「……そんな!!」
愕然とする新開。
「嫌だよ靖友靖友靖友そんな。そんなのってあるかよ。キープだなんて嫌だ嫌だ」
「落ち着け隼人。落ち着こうお互い。そんな筈はない。ないとも。なかろう」
ちっとも穏やかでない二人。
「そうだ!」
「なんだい?」
東堂はおもむろにスマホを取り出した。
「巻ちゃんに直接聞けば良いではないか!」
「おめさん天才かよ!」
電話をかけ始める。
明らかに錯乱している東堂と新開。
巻島にそんなこと聞いて大丈夫なのか。
談話室に呼び出し音が響いた ──。
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