荒北さん争奪戦 (短編3頁)





本日のレースは関東大会。

各高校から1チーム6人で出場している。




今「……」


総北1年の今泉は、試合前から妙に落ち着きが無かった。



スタートして暫くすると、突然こんなことを言い出す。

今「すんません。オレ、先に行きます」

手「は?」


隊列から離れる今泉。


手「おいおいどうした今泉。ご機嫌ナナメか?」

慌てる手嶋。


今「ちょっと用事ありますんで」

手「そうか、なら仕方……ってオイ!!」

怒る手嶋。
しかし今泉は行ってしまった。




手「アイツ!オレが2年だと思ってナメ……!」
小「あっあの!今泉くんは決してナメてるわけじゃなくてですね!」

小野田が後ろから発言した。



手「何か知ってるのか小野田」

小「今泉くん、ホントに用事があるんだと思います」

手「そうか、ホントに用事が……だから!それ試合中じゃなきゃダメなのか?」

小「……ダメなんだと思います」

手「どんな用事だよそれ!」

手嶋は頭を抱える。



手「つか、そんな勝手が認められるか!小野田!連れ戻してこい!」

小「はわわ!はっはい!」


小野田は慌てて今泉を追いかけた。






小「今泉くーん!」

今泉の背中が見え、声を掛ける。



今「小野田。ついて来たのか」

小「戻らないとまずいよ。手嶋さん怒ってたよ」

今「……用事が済んだらちゃんと戻る」

小「今泉くん……」


小野田は不安そうに尋ねる。

小「まさか……やっぱり……あのヒトに?」

今「……ああ。今日がチャンスなんだ。滅多に会えないからな」


今泉は更にスピードを上げた。




小「今泉くん……本気で……」









黒「箱学の独走スね」


先頭は箱学だった。

序盤から2位以下を大きく離している。


荒「ヘッ!関東大会でオレ達に勝てる学校なんかあるかよ!」

荒北はチームの先頭を軽快に引いていた。


真「あ……でも」

最後尾を走る真波は風の動きを読んだ。



真「来たみたいですよ。強豪校が」
泉「なに?」


真「1人……いえ、2人のようです」



振り向くと、数秒後に今泉が姿を現した。
その後方に小野田も見える。



泉「総北です!」

真「今泉くんと、坂道くんだ」


新「なに!」

黒「今泉だと!?」

ざわつく箱学。


今泉は箱学の面々には目もくれず、まっすぐスーッと先頭に並んだ。


今「荒北さん!」


荒「よォ今泉ちゃん。元気そうじゃナァイ」


会話を交わす今泉と荒北。





黒「アイツ!オレ達に挨拶もせずいきなり荒北さんに!」

新「……」






今泉は最近、箱学でちょっとした有名人になっていた。

数日前、荒北と2人で映画を観に行ったからだ。

みんなのアイドル荒北と抜け駆けデートをしたということで、荒北に想いを寄せるメンズから怒りをかっていた。





黒「何しに来やがった!」

小「あわわ……」


真「困るね坂道くん。また今泉くんを野放しにしたのかい?」

小「ま、真波くん」

真「ちゃんと鎖で繋いでおかないから、ほら。あんなの前代未聞だ」

小「ご、ごめん。すぐ連れて帰るから」



後方でのざわめきなど全く気にせず、今泉はポケットからメモを取り出した。

今「荒北さん!これを!」

荒「なァに?ソレ」


今「オレのケータイ番号です!!」

荒「ハ?」


箱学「!!!」

小「どっひゃー!!」


















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イイネ