運命のグラス (長編11頁)★オススメ





女性客GHがバタバタと荒北に駆け寄ってきて尋ねた。

 

「荒北くん!聞いた?」

「は?何を?」

「まり子のこと!」

「!」

 

そういえば今日はまり子の姿が見えない。

この前、新開に勝負をかけるとかみんなが言っていたが、あれからどうなったのだろうか。

 

「まり子、フられたんだって!新開くんに先週」

「え……」

 

先週ということは、あの日荒北が帰った後の出来事だ。

 

「もうみんなビックリ!」

「あの狙った獲物は逃さないまり子がねー!」

「あ……そォ」

 

 

 

そうか……。

新開のヤツ、断ったんだ……。

 

 

 

荒北は少しホッとした。

しかし、かといって事態は何も変わってはいない。

新開争奪戦からまり子が脱落したというだけで、レースは依然開催中なのだ。

 

「まり子がダメだったってことは、あれよね。ゴージャス系は消えたってことよね」

「やっぱ清楚系?それでいく?」

 

女性客GHは大興奮だ。

 

 

……ほらな。

 

 

店内はもう次は誰が挑戦するのか、そんな話題でもちきりだ。

荒北はもうこんな世界はうんざりだった。

 

 

勝手にやっててくれ。

オレぁリタイアだ。

そもそもレースに参加する資格すら無かったけどな。

 

 

 

……しかし荒北は少し気になっていた。

あの、自信満々でプライドの高いまり子が、よくおとなしく引き下がったな、と。

結構な悶着があったのではないか。

新開は何も言わないのでわからないが。

 

 

その時。

 

コロンコロン。

 

 

入ってきた人物を見て、店内が一斉に静まり返った。

 

 

 

まり子だった。



 







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イイネ