炎の金メダル (長編20頁)★オススメ
とりあえず松井を再びソファへ座るよう促す。
荒北も対面のソファに座り直し、ティーカップを手に取ってハーブティーを半分まで飲んだ。
ハーブティーには精神を落ち着かせる効果がある。
荒北は心の中で、用意してくれた新開に感謝した。
「その前にまずは……」
松井が涙を拭いて少し落ち着いたようなので、荒北は話し出した。
「AIというものを知って下さい」
「……はい」
松井は素直に耳を傾ける。
「AIとロボットは何が違うか。……ロボットは人間が設定したプログラムに忠実に動きます。それ以上でもそれ以下でもない」
「ええ」
「しかしAIは人工知能。与えられた情報を元に、自分で考え、処理し、学習し、予測し、応用し、実行する」
「……」
「それは人間と同じ、と思うでしょうが、違います」
「……?」
荒北は、松井の目を見て言った。
「人間より、優れているんス」
「……!」
荒北は例をあげて説明する。
「将棋のプロとコンピュータが対戦するイベントがよくありますよね。……昔はプログラムも粗末だったが、今ではもう、人間はAIの頭脳には勝てない」
「……ええ」
「膨大な量の手筋を解析し、中から最適な一手を取捨選択する。その処理スピードは人間には不可能。……これがどういう意味か」
「……?」
「なぜその一手が選択されたのか、その検証には何人もの人間が何日かかっても追い付かない。……そんな処理をAIは数秒でやっちまう。……つまり」
荒北はひと呼吸置いてから言った。
「なぜAIがそれを選んだのか、人間には永遠にわからないんス」
「……」
松井はまだ意味がよく理解出来ていないようだ。
荒北は言い方を変えた。
「“ロボット三原則”って知ってるでしょう」
「あ、それなら知ってます」
即、反応する松井。
SF映画でよく出てくる用語だからだ。
ロボット三原則とは、簡単にまとめると以下のようになる。
1、ロボットは人間に危害を加えてはならない
2、ロボットは人間に服従しなければならない
3、ロボットは自己を守らなければならない
人間が安全にロボットを扱うための最低条件である。
「この三原則が、AIには通用しないんス」
「えっ……?」
驚く松井。
「そりゃそうス。AIは自分の頭で考えることが出来る。たとえ三原則がプログラムされていようと、必要ないと判断すりゃアそんなもん自分で簡単に解除しちまう」
「……そんな!」
松井は思わずソファから腰を浮かせた。
「ということは、AIは人間に危害を加える可能性があるってことですか?」
「その通りス」
荒北は即答した。
「大量のロボットが人間を襲うSF映画がよくあるでしょう。……あれが現実になるってことっス」
「なんて……ことだ!」
中腰のまま、呆然とする松井。
「AIを搭載したアンドロイドは、見た目は人間と変わらねェ。しかし、人間よりも頭が良く、身体も頑丈で、力も強い。……AIがもし“人間などこの世に必要無い”と判断すりゃア、人類なんかひとたまりもなく数日で絶滅しちまうでしょうよ」
「な……!なんて……危険なものなんだ!AIってのは!」
「そうス。AIは、とてつもなく危険な技術なんス」
淡々と説明する荒北。
「もし、優れたAI技術を軍事利用してやろうなんて国が現れたら……?」
「……世界の秩序など無くなってしまう……!」
松井は真っ青になって叫んだ。
「その通りス」
荒北はソファから立ち上がった。
そして窓から庭を眺めながら言う。
「AIは、兵器だ。……そんなモン、作っちゃいけねェ」
「兵器……!!」
衝撃を受ける松井。
荒北は窓の外を睨み付け、はっきりと言い放った。
「人間より優れた知能を持つモノなんて、作り出しちゃダメなんだ!!」