炎の金メダル (長編20頁)★オススメ





「ラジコンラジコン!」

「ドローンだ」



翌週の日曜。


荒北は庭で数機のドローンをホバリングさせている。

健がはしゃいで寄って来た。
ジャンプして捕まえようとしているが、届かない。


「ねぇ、なんでプロペラも翼も無いのに宙に浮かんでるの?」

「国家機密だ」

「へー!コッカキミツかー!かっけー!」

なんとなく言葉の響きだけで大興奮している健。




新開が皿に盛ったビスケットをガーデンテーブルの上に置く。

すぐに華が飛んで来て、手を伸ばした。


「慌てなくてもまだたくさんあるから。ちゃんと座ってお食べ」

新開が笑いながら華に言う。


「ハカセとジョシュは何屋さんなの?」

ちょこんとガーデンチェアに座り、口をモグモグさせながら華が尋ねる。



「博士はね、特許をたくさん取得してるんだ。その収入で次の研究をして、また特許を取る」

向かい側のチェアに腰掛けながら、新開が説明する。


「トッキョってなあに?」

「オレ知ってる!」

健が聞き付けて走って来た。


「東京特許キョキャキョキュだよね!」

自信満々に答える健。


「キョキャキョキュってなあに?」

疑問点が増える華。


「余計難解にしてンじゃねーよ健!」

荒北が怒鳴る。


健は再び荒北のドローンへ駆けて行った。




「私ね、ジョシュ」

「なんだい?」

華は口の周りにビスケットの欠片を付けたまま、テーブルに頬杖をついている新開の顔を覗き込んで言った。


「大きくなったらジョシュのお嫁さんになるの」

頬を赤らめウフフと微笑みかける。


「華ちゃんにプロポーズされたよ今」

すぐに荒北に伝える新開。


「へェ」

それを聞いて荒北がテーブルへ寄って来た。


「受けンのか?ン?」

テーブルに両手をつき、新開と華の両方の顔を覗き込む荒北。



「華ちゃん……」

新開は華に優しく言った。

「オレね、好きな人がいるんだ。だから、華ちゃんをお嫁さんには出来ないんだよ。ごめんな」

「ダメなの?」

華はしょんぼりする。


「罪なヤツ」

荒北はフン、と鼻を鳴らした。









~研究室~





「靖友。もう遅いよ。今夜はここまでにして寝よう」


ドライバーを持つ荒北の手をそっと握る新開。


「……もう、こんな時間か……」


作業を止め、時計を見てフーッと息を吐く荒北。

両腕を上げて伸びをする。



「……」

そのまま天井を見上げ、考え事を始めた。



新開はその様子を見て声を掛ける。

「ダメだよ。何も考えずに寝よう、ほら」

荒北の肩に手を置き、椅子から立ち上がらせようとする。


「……オレぁ……」

荒北が呟く。





「オレぁ……バカだ」


涙が頬をつたいポタッと落ちる。




「靖友……」




「バカだ。バカだ。バカだ」

「靖友!」

頭を抱えて泣き出す荒北を、抱き締める新開。

「靖友はバカなんかじゃないよ。再生可能エネルギーだって超伝導量子干渉計だって、靖友の発明は世の中の役に立ってるんだから」

「そんなモン、どーだってイイ。オレには関係ねェ」

顔を両手で覆う荒北。



「靖友の悲しみは全部オレが受け止めてやる。オレはどんな時でもおめさんの傍にいるよ」

「新開……」


荒北は新開に抱き付いて胸に顔を埋めた。

「新開ィ」



「靖友、愛してる。おめさんにはオレがずっとついてるからな」


「……ウン」



子供をあやすように、新開は荒北の背中をゆっくりポン……ポン……と優しく叩く。

そうしてもらうと、だんだん荒北の心は安らいでいくのだった。

















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イイネ