炎の金メダル (長編20頁)★オススメ
製作している間は、自分に惚れるプログラムを組み込もうかとも考えていた。
しかし、すぐにそんなバカな考えは捨てた。
自分はラブドールを求めているわけではないのだから。
それに、プログラムされた愛情など嬉しくも何ともない。
自然に自分を気に入ってくれれば、それが一番だ。
荒北のそんな懸念は必要なかった。
新開は、すぐに荒北を気に入ってくれた。
素直に、無条件に、真っ直ぐに、正直に、誠実に、荒北を慕ってくれた。
「靖友さえ居ればオレは何もいらないよ」
そんなことまで言ってくれた。
嬉しかった。
人里離れた森の奥で、世間の情報も遮断し、不自由な生活を強いているというのに、何も不満は漏らさずにいてくれた。
不思議な感じだった。
新開隼人にそっくりだが、別人。
人間ではなく、アンドロイド。
普通に意志疎通と会話が出来る。
冗談だって言い合える。
友達という感覚でもなく。
もちろん恋人でもなく。
自分が生み出し、育成しているということもあり、自分の子供のような感覚……?
いや、分身?
いや、家族、だろうか。
それとも、パートナー。
それとも、秘密を共有する運命共同体……。
新開のことは大好きだ。
とても大切に思っている。
今後死ぬまでずっと、二人きりで一緒に生きていくのだ。
お互い信頼し合い、守り合って。
コイツには、オレしか居ない。
オレだって、もうコイツしか居ないんだ ──。
新開に対して新開隼人と同じ恋愛感情は抱けない。
自分にとって新開は、身内や同志のような存在だ。
新開も自分を家族のように慕ってくれている。
良い関係を築けたと思っている。
そして新開隼人には、もう二度と、会えない。
合わせる顔がない。
しかし、恋心が消滅したわけではない。
会えないと余計に想いは募る。
忘れたくとも、目の前に、恋しい人と同じ顔がある。
毎日、恋しい人と同じ姿と一緒に生活する。
しかし、別人。
これは、生殺し以外のなにものでもなかった。
全ては自分の軽率な行動の顛末。
自業自得。
新開隼人と新開。
この二人の人権を、冒涜してしまった罪 ──。
命をもてあそんでしまった罰 ──。
自分は一生、この業を背負っていくのだ。
罪の意識。
募る恋心。
生殺しの拷問。
誰かに発見されないか怯える毎日。
そして社会から隔絶された生活のストレス。
これらが日々積み重なり、荒北の精神は確実に蝕まれていった。
「ずっと……死ぬまでずっと、二人きりで生きていくって……言ったじゃないか靖友」
「もちろん、そのつもりだ。なんで……なんで急にそんなこと言い出すんだよ」
ゆっくりと歩み寄る新開の顔は、悲しみの表情でくしゃくしゃになっている。
荒北はなぜいきなりこんな展開になっているのかわからない。
「おめさんは、今までずっと、オレを通して新開隼人を見ていたのか……」
「……!!」
なぜ新開隼人の存在を知ったんだ。
いったいどこから……。
原型モデルが誰なのか明かしたことはなかった。
新開隼人の名前など、一度も口に出したことはなかった。
「オレは……おめさんにとって、いったい何だったんだ……」
「新開……」
「おめさんが悲しい時、つらい時、泣いてる時、いつも傍についていたのはオレだ。新開隼人じゃない。オレだ。おめさんの一番近くに居るのは、オレなんだ」
「……」
いつか……。
いつか、こんな日が来るんじゃないかと……。
ずっと……恐れていた。