炎の金メダル (長編20頁)★オススメ
~7年前~
『the games of the 32nd Olympiad in 2020 are awarded to the city of ……』
テレビ画面を凝視し、全員がゴクリと唾を飲み込んだ。
『Tokyo』
「うおおーーー!!」
談話室に歓声が上がる。
箱学寮の3年生運動部員達は皆飛び上がって喜んだ。
「すげェな!ついに東京オリンピックか」
「この中から出場する奴も出てくるかもな」
声を掛け合う荒北と新開。
希望に満ちた表情の面々。
東京オリンピックは7年後。
25歳になっている。
まだまだ先の話だ。
その時自分はいったい何をしているだろう。
荒北は、新開のきらめく笑顔にみとれながら、そんなことを考えていた ──。
新開に、恋をしていた。
その眩しい笑顔を、自分だけに向けてほしかった。
その美しい顔を、独り占めしたかった。
その優しい心で、自分を包んでほしかった。
しかし同性愛など、受け入れてもらえる筈もない。
想いを伝えるなど、出来るわけがない。
自分の気持ちを圧し殺し、高校時代を過ごした。
卒業すれば。
大学で離れ離れになれば。
きっと、すぐに忘れられる。
きっと、普通に彼女が出来る。
きっと、この苦しみから解放される。
そう思っていた。
大学生になった。
それが甘い考えだったことを思い知る。
高校時代と違い、毎日会えないということがこんなにも、つらい。
時々レースで顔を会わせるたび、どんどん大人びていく新開にドキリとする。
顔つきも身体つきも逞しくなり、アイツは益々魅力を帯びていく。
忘れるどころか、想いは強まっていく一方だった。
新開が、欲しい。
新開が、欲しい。
新開が、欲しい。
どうすれば、いい。
どうすれば、いい。
どうすれば、いい。
大学でAIの理論と技術を学んだ。
これしかない、と思った。
夢中だった。
後先の事など、何も考えていなかった。
後戻り出来なくなるなんて、思いもしていなかった。
自分が何をやらかしているのか、全く気付かなかった ──。
「……すげェ。本物ソックリだ。ホントに生きてるみてェに生々しい……」
アパートで秘密裏に製作していたものが、完成した。
「オレ……天才じゃね……?」
早く。
早く、起動したい。
早く、命を、吹き込みたい。
やっと、完成したのだ。
やっと、自分だけの……!
荒北は、「それ」を起動させた。
……ブウゥ……ン。
「それ」が軽く振動する。
ピク。
……ピクッ。
「それ」が少しずつ動き出す。
グ……ググッ。
「それ」の全身の筋肉が、躍動しだす。
ゆっくりと、「それ」の両目が開かれる。
深く青く美しい瞳が、左に、右に、揺れる。
やがて、その瞳が荒北を捕らえ、焦点を合わせた。
「それ」は、頬を緩ませ、
口角を上げ、
目を細め、
荒北に笑顔を向けた。
そして、ゆっくりと口を開き……。
初めての言葉を発した。
「やあ、靖友」
……!!
荒北は息を飲んだ。
胸が熱くなる。
オレは……。
新開を……。
手に入れた ──!!