炎の金メダル (長編20頁)★オススメ





翌日。




パチン。パチン。

庭で剪定している新開。


荒北は買い物に出掛けている。




「靖友……」



昨日からずっと落ち込んだままの荒北の事を思い返す。


理由がわからない。
なんとか元気になってもらいたい。


今夜は荒北の好きなタケノコご飯でも作ろうか。


新開はそんなことを考えながら植木の手入れをしていた。





ガサガサッ!

「!!」


急に茂みをかき分ける音がし、注目する。





「ジョシュ!」

現れたのは健と華だった。


「おめさん達……!」

怪訝な顔をする新開。




転がるような勢いで子供達が庭に入って来る。


「来ていいのは日曜日だけだって言ったろ?今日は火曜……」


「ごめんなさいジョシュ!でもどうしても……」

「ジョシュ!自転車乗るの?」

「は?」


矢継ぎ早に訳のわからない事を言い出す子供達。

新開の足元に駆け寄り、何やら興奮した様子だ。

手に何かの雑誌を持っている。



「自転車は……乗れないんだよオレ。バランス取りが難しくて……」


「じゃあこれなに!?」


健が雑誌の表紙を新開に掲げた。





「── !!!」





ゴウン!!と頭を金づちで殴られたような衝撃を受ける。


目を見開く新開。


視界に飛び込んできた、その雑誌の表紙には……。






自分と同じ顔をした人物が載っていた ──!








『月刊ロードレース』

雑誌のタイトルだ。


表紙では、レーシングスーツ姿の自分そっくりな人物が、ロードバイクに跨がってこちらを見ていた。


その下には大きな見出しで


 『東京オリンピック
  スプリント部門
  金メダル最有力候補

   新開隼人選手

  独占インタビュー!』


と書かれていた。





── グラッ。


ガタン。


新開は目眩を起こし、ガーデンテーブルに両手をつく。



ポトッ。

剪定バサミが芝の地面に落ちた。




ジンジンと頭が熱を帯びてくる。

目の前が真っ暗になりかけている。

思考が定まらない。




「お母さんが自転車好きでさ!この本いつも買ってるんだ!これ今月号だよ!」

「これ、ジョシュよね?どうして本に載ってるの?ひょっとして双子?」



子供達の言葉を理解するのに時間がかかっている。




……この子達は……いったい何を……言ってるんだ?


……処理が……解析が……急激に増えて……オーバーヒートしそうだ……。





しかし新開の状態などお構い無しに、子供達は雑誌を突き付け問い詰める。


「これ、中にね、もっとたくさんジョシュが居るの」


華が雑誌をテーブルに乗せ、パラパラと中をめくって見せる。



巻頭カラーページには、自分と同じ顔をした人物の様々な角度からの写真がいくつも載っている。

端正な顔立ちをしたその人物は、まるでファッションモデルのようにグラビア映えしていた。

その後にはインタビュー記事が数ページ続いている。




「なんかいっぱい色々書いてあるんだけどさ、難しい字ばっかで読めないんだ。ジョシュ、読んでみてよ。なんて書いてあるか教えて!」



健はインタビュー記事のページを開き、新開に差し出した ──。









(記者)今回は東京オリンピック日本代表の新開隼人選手にお越し頂きました。宜しくお願い致します。

(新開)宜しくお願い致します。

(記者)えー、まずはご経歴を簡単に紹介致しますと……。中学の頃から数々の賞を獲られ、高校は名門の箱根学園ですね。インターハイにも勿論出場されております。大学は明早。こちらでも自転車競技部ですね。大学2年から暫く活動を休止なされて……しかし昨年突然オリンピック代表選考大会に出場され、記録を総ナメされて、見事日本代表に。

(新開)ええ。だいたいそんな感じです。

(記者)大学2年から4、5年ほど空白期間がありますね。これは……怪我でもされていたんでしょうか?

(新開)いえ。その間は……人捜しをしていました。

(記者)はい?……え?……人捜し?

(新開)はい。今回オリンピック出場を決意したのも、人捜しのためです。

(記者)え?オリンピックも?……すみません。意味が全く理解出来ないんですが……どういう事です?




(新開)オレは、5年前から行方不明の友人を見つけ出すために、オリンピックに出るんです。
















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イイネ