炎の金メダル (長編20頁)★オススメ
松井は帰って行った。
2階の窓からそれを確認し、新開は1階へ降りる。
「今日はずいぶん長く話し込んでたんだね」
カチャカチャとトレイにティーセットを乗せながら言う新開。
「……」
荒北はテーブルの横でたたずんでいる。
「途中、もうお茶が無くなってるんじゃないか、お代わりいるんじゃないか、ってソワソワしてたんだけどさ。グッと我慢したよオレ。ははっ」
褒めて褒めてと言いたげに、笑いかける新開。
「……なにが……」
「え?」
「なにが良心だ!偉そうにオレぁ!!」
「!!」
荒北が突然叫び出したので、驚いた新開は持ち上げていたトレイを慌てて再びテーブルに置く。
「松井サンに言ったコト、全部自分へのブーメランじゃねェか!!」
「靖友!」
両手で頭を抱え大声を上げる荒北。
新開は肩を掴み荒北を押さえる。
「良心なんてオレにあるか!オレは、エゴの塊だ!オレは、自分の欲望を叶えるために一線を越えたんだ!!」
「落ち着け靖友!」
首を激しく横に振って泣き喚く荒北。
「オレみてェなのをよ!マッドサイエンティストって言うんだ!!」
「靖友!!」
涙を流して暴れる荒北を、新開は強く抱き締める。
「オレぁ……!」
「!」
荒北は両手で新開の頭をガシッ!と掴んだ。
「オレぁ、どうしてもオメーが欲しくて……!」
頭を引き寄せ、荒北は新開の唇に自分の唇を重ねた。
「!!」
驚く新開。
荒北は新開の頭を掴んだまま、唇を強く押し付けている。
「……」
やがて、新開はうっとりとした表情で目を閉じた。
荒北の情熱が唇を通して伝わってくる。
今までとは違う愛情を感じ取り、身を委ねた。
「……ハッ!!」
ドン!!
荒北は我に返り、新開の胸を押して突き放した。
「靖友……?」
「……すまねェ……!オレ……!」
間合いを取り、手の甲で唇を拭う荒北。
「なんで謝るんだい?」
「……」
荒北は真っ青になっている。
「今の。キス、だよね?愛し合う者同士がするっていう……」
「……!!」
しまった!という顔をする荒北。
「嬉しいよ靖友……」
トロンとした瞳で荒北を見つめる新開。
「……」
しかし荒北は首をゆっくり横に振りながら後ずさった。
「オレ、気に入ったよ、キス。靖友の唇、柔らかくて、温かくて、すごい気持ち良かった」
新開ははにかみながら、自分の唇をペロッと舐めた。
「い、今のは……間違いだ。忘れろ」
震える声で荒北は言った。
「忘れろ?無理だよ。もう強烈にインプットされちまった」
キョトンとする新開。
そして、両手を広げ荒北にゆっくりと近付く。
「なぁ靖友……。もう一度してくれよ。キス」
「……!!」
荒北は叫んだ。
「ダメだ!出て行ってくれ!」
「!!」
びっくりして動きが止まる新開。
「すまねェ!オレを一人にしてくれ!頼む!!」
「え……なんで?」
「お願いだ……!新開……すまねェ……!」
「……」
本気ですまなそうに動揺している荒北を見て、新開は意味がわからず残念そうな表情をする。
「……」
しかし、やがてトレイを持ち上げ、言われたとおりおとなしく応接室を出て行った。
パタン。
ゴン!!
荒北は拳でテーブルを殴った。
「何やってんだオレは……」
ゴン!!
もう一度テーブルを殴る。
「何を!やってンだ!オレはァ!!」
叫んだあと、頭を抱えてガクンと床に膝をつく。
「アアア!頭が……おかしくなりそうだ……!いや、もうとっくにイカレてんのか……!」
再び涙が溢れてきた。
「オレは……いったいどうすりゃイイんだ……」
頭を抱えたまま床に崩れ落ちる。
「誰か……教えてくれよ……!」