可愛いヒト (短編3頁)





ここは郊外の大型ショッピングモール。

週末なのでたくさんの客で賑わっている。





今泉は、本屋で物色中だった。

ここの本屋は広いので、地元では手に入らない本が数多くある。






荒「どっかで見た顔だと思ったら、総北のおりこうチャンじゃナァイ」


今泉は自分が声を掛けられたのだと認識し、振り向いた。


今「!」


後ろに立っていたのは、荒北だった。



この人は確か……箱学の3年生……そうだ、エースアシストの荒北さんだ。

箱学で一番怖い人だ……!!


身構える今泉。



今「……ども」

荒「何読んでんのォ?」


荒北は今泉が手にしている本を覗き見た。


荒「『本当にあった怖い自転車』ァ?ヘッ!オメー、休日までチャリのことで頭一杯かヨ!ホント、おりこうチャンだなァ」

呆れたように荒北は言った。


今「……」


……カツアゲされるんだろうか。

オレ今日いくら持ってたっけ。

足りなかったらカードでもOKかな……。


今泉は冷や汗を流しながら青くなっていた。





荒「ねェの?趣味とか」

今「……自転車です」

荒「今日は一人ィ?ダチは?」

今「……一人です」


友達は、居る。
小野田だけだが。

荒北の尋問に、悲しくなる今泉。


荒「そういやオメー、この前小野田チャンとアニメ映画観に来てたよなァ」

今「!」


そうだ。
先日、映画館前で箱学の連中とバッタリ出会い、その後一緒にパフェを食べに行ったんだっけ ──。

今泉はその時のことを思い出した。


小野田は確か荒北さんの事を、インターハイではとても世話になった、すごくいい人だった、と絶賛していたな。



……もしかしたら、見た目ほど怖くないのかもしれない……。



そう思うと、今泉は少し緊張がほぐれてくるのだった。




荒「……よォし」

今「?」


荒北はニヤリと笑い、

ガシッ!

今泉の肩に腕を回してこう言った。



荒「今からオレと映画行こうゼ」

今「は……?」


意味が解らない今泉。



荒「心配すんナ。奢ってやんよ」


荒北は今泉を確保したまま本屋から映画館方面に連行し出す。



今「え?いや、ちょ!荒北さん?」



今泉はジタバタするが、荒北の強引さに負けておとなしく映画館のフロアに連れて行かれた ──。







~映画館~



今「『ドルパン』?」



荒北が誘ったのは『ドールズ&パンツァー』というアニメ映画だった。



今「タイトルは聞いたことありますが……」


学校で小野田が興奮気味に話していたような気がする。
萌えアニメっぽいが実はそうではないとか言っていたような……。

今泉は微かな記憶を掘り起こす。



荒「ドールと呼ばれるカワイイ女子高生達がたくさん出て来るンだ」

荒北が簡単に説明を始める。


荒「ところがズッコン!」
今「ドッコイですね」

荒「この女子高生達、戦車で戦うンだ!」
今「戦車?戦争モノですか?」

荒「ところがバッコン!」
今「ドッコイですね」

荒「誰も死なない」
今「意味がわかりません」



荒北は今泉の背中を押してシアター内へ入って行った。



席に着いた時、今泉が思い出したように言う。

今「あ、ドリンクとかポップコーンとかいりませんか?オレ買って来ますけど」

荒「いらねェよ。てか、そんなモン置いてたらぶちまけちまうゼ」

今「?」



不思議に思っていると、場内の明かりが消え、映画が始まった。



ドーーン!!


突然、背もたれから衝撃を受け、今泉は椅子から落ちそうになった。


ズガガガガ!!


耳元でけたたましい機銃音が鳴る。


モクモク。


火薬の匂いまでしてきた。



今「こ、これは……?」

荒「これが4DXだ」

今「4DX……?」
















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イイネ