モテ期、襲来 (中編5頁)





荒「フア~」




体育館裏で昼寝を終えた荒北は、教室に戻るため校庭の隅を歩いていた。





荒「ン?」





前方で4、5人の女子が全員で木の枝を見上げている。


「あ~ダメだぁ」


数人で揺らしているが、太い木はビクともしない。


どうやらバドミントンの羽根が枝に引っ掛かってしまっているようだ。
ラケットを持った手を伸ばしても届かない。


「どうしよう。もう昼休み終わっちゃうよ~」

途方に暮れている女子達。






荒「……」




荒北は足元に落ちている小石を拾った。



大きく振りかぶって……。


荒「ヨッ」

投げた。



パスッ。


ストン。


「!!」



見事、一投で羽根は無事落ちた。



「え?」
「誰?」


驚いて振り向く女子達。





「あ、ありが……」


礼を言おうとしたが、荒北は既に背を向けて立ち去っていた。



「……」


「今の……荒北くん……よね」


「うん。荒北くんだった」


顔を見合せる女子達。



「一発で命中させたわ」

「あの距離から」

「すごい……」


「てゆーか、優しい……」

「無言で去って行くとか……」



「いつも怖い顔してるから近寄り難いのに」

「実はいい人?」



「あっ!そういえば!」

一人が思い出したように叫ぶ。


「この前のミスター箱学コンテスト!中間発表で確か荒北くん2位だった!」

「ええっ!?」

驚く女子達。



「なによ、人気あるんじゃないの!」

「全然知らなかった」

「眼中に無かったー」

ざわざわと沸き立つ。



「あっ!そうだ!」

今度は別の女子が叫ぶ。


「部活対抗野球大会の時!最後の最後にクローザーで出てきて……!」

「あのチャリ部対サッカー部の時?」

「そうそう!覚えてる!急遽抑えのピッチャーで!」

「うん!あれ確かに荒北くんだった!」


「あれ凄かったよね!チャリ部大ピンチだったのに、三球三振ズバズバ決めて!」

「見事にセーブしたんだよね!」

「めっちゃいい試合だった!」

「確かヒーローインタビューも受けてたし!」


「……」





ひとしきり大騒ぎした後、女子達は口を揃えて言った。







「荒北くんて……カッコいい」






















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イイネ