ラブレター (中編5頁)
バーーン!!
荒北は新開の部屋のドアを勢いよく開けた。
荒「バァカ!!」
新「入って来るなりバァカって!」
驚いて振り向く新開。
荒「オレの足はもう動かなかったんだヨ!限界超えてたんだ!オメーが掴んでたところでリタイアは確定だったんだヨ!」
新「なっ……!」
顔がひきつっている新開。
新「一体なんの話……」
荒「とっくにバレてんだボケナス!!」
ポカッ!とグーで新開の頭を叩く。
新「い、いつから……」
叩かれた頭を手で押さえながら尋ねる新開。
荒「2通目ぐらいだ」
新「そんなに早く?ど、どの部分で?」
荒「オメー、オレの鼻がいいの忘れたか」
新「鼻?」
荒「チョコバナナの匂いがプンプンしてンだヨ!!」
新「あっっ!!」
まさか文章ではなく匂いでバレるとは想定外だったようで、挙動不審に目が泳ぐ新開。
荒北は両腕を新開の首に回し、ギュッと抱き締めた。
新「!!」
新開は驚いて硬直する。
荒北は新開の髪を優しく撫でながら言った。
荒「……だからァ、あン時のことはオメーが気に病む必要全くねェんだよバァカチャン」
新「……」
荒「まさかそんなコトずっと気にしてたなんてなァ」
新「……靖友」
荒「何度も引き上げんの当たり前だろ。オレぁアシストなんだから」
新「靖友、オレ……」
新開の瞳からどっと涙が流れ落ちる。
新「あの光景が……焼き付いて離れなくて……おめさんが……目の前で脱落……」
荒「ショッキング映像見せちまって悪かった。オレが勝手に暴走したせいだ」
荒北は更に強く抱き締めた。
新「靖友……靖友」
新開も荒北の背中に手を回して抱き締めた。
荒「新開……嬉しかったぜ。ラブレター」
新「……!」
ピクッとなる新開。
荒「ラブレターだろ?アレ」
新「う……」
荒「初めて貰ったヨ」
新「……オレも初めて書いた」
荒北は腕を緩めて新開の頬を両手で包む。
そして親指で新開の涙を拭った。
荒「好きなんだろ?オレのこと」
新「うっ……」
真っ赤になる新開。
荒「オレと付き合いたいんだろ?」
新「うう……」
目を逸らして狼狽えている。
荒「ハッキリしねーなァ!ちゃんと答えねェと恋人になってやんねェぞ!」
新「好き!好き好き好き好き好きーーーっ!!」
慌てて答える新開。
荒「よォし」
荒北はニヤリと笑った。
荒「オメーはオレがこれからもずっと引いてやる。オメーはオレを引く必要なんかねェ。黙って着いて来りゃァいいんだ」
新「靖友……ホントに?ホントに恋人になってくれるの?」
新開は信じられない。
荒「オメーのラブレターに感動したんだヨ。何度も読み返したぜ。毎日楽しみだった」
新「……最初は、ただおめさんを元気づけたかっただけなんだ。でも、匿名のつもりだったからだんだん本音が止まらなくなってきて……」
荒「あの呪いの手紙が無かったら、こんな展開にならなかったろ?つまり、あのカップルは結果的にオレ達のキューピッドだな。感謝しねェと」
新「あ……でもオレ、彼氏にヤキ入れちゃったよ」
荒「……彼女も鬱発症……」
二人は顔を見合わせた。
新「今度二人で見舞いに行こうか」
荒「そうだな。で、もし拗れた場合は東堂に任せよう」
新「ははっ。ひでぇ」
発端は呪いの手紙でも、結果はハッピーエンド。
お幸せに、お二方。
おしまい