B線からのSOS (長編18頁)★オススメ
ガバッ!
夜中に飛び起きる荒北。
「ハァ……ハァ……」
新開と同様、荒北もまたあの夢に何度も襲われていた。
「解ってるっつーの。何度も催促すンな。やってるじゃねェか。頑張ってンだろオレ……」
ベッドの上で胡座をかき、涙を手の平で拭う。
「一緒に探す仲間は居なくなったけどヨ……。また独りに戻っただけだ。独りは慣れてる。ずっと独りでやってきたンだ……」
ベッドから降り、リビングへ行く。
冷蔵庫からベプシを出し、一口飲んだ。
「……」
広いリビングがいつもより余計にガランと感じる。
バルコニーに出て、繁華街の方を見やる。
風が冷たい。
「……なンか……気ィ抜けちまったなァ……」
新開と出逢ってから、ほぼ毎日のように会っていた。
出逢橋で歌った後、仕事帰りの新開と合流してbarでダベるのが日常化していた。
「……楽しかったなァ。アイツ、面白かったし」
運命の相手探しという共通の使命を除いても、新開とは何と言うか、ウマが合った。
まるで昔からの知り合いのように。
「……へへッ。なんか変な喧嘩しちまったなァ。あれじゃまるで、恋人同士の別れのシーンだ」
苦笑する荒北。
怒ってはいない。
B線の話だって、元々無理のある設定だった。
むしろ、今までよく付き合ってくれたと新開には感謝している。
しかし、あんな別れ方をしてしまい最早気まずい。
このままもう会わず、フェードアウトするのがお互い良いだろう、と思っている。
「……新開……」
川面を眺めながら新開の名前を呟く。
「なんで……オメーのこと考えると……涙が出てくンだろな……」
涙がポタリと手摺りに落ちた。
「……教えてくれよ新開ィ……」
荒北の瞳からは、拭っても拭っても涙が溢れて止まらなかった。
翌日。
「……!」
昼頃買い物のため街へ出掛けた荒北は、公園に差し掛かって足を止めた。
「新開……」
前方のベンチに新開が座っていた。
サンドイッチを手にしている。
ちょうど昼休みの時間帯のようだ。
隣に新開の親友も座っていることに気付き、荒北は思わず木の陰に隠れた。
「……」
二人の様子を覗き見る。
新開は元気無さそうに項垂れている。
親友がなにやら話し掛けている。
「……オメーはいいよナ。そうやっていつでも何でも相談出来る相手が居てヨ」
思わず口から出た呟きにハッとする。
……自分は一体いつからこんなに嫉妬深くなってしまったのだろう。
こんな不毛で黒い考え方などしたくないのに……。
新開がベンチからスックと立ち上がった時だった。
「あっ!新開さんよ!」
「!」
荒北の後方から数人の女性グループが新開を指差して騒ぎ立てた。
新開の会社の女性社員達のようだ。
「福富さんも一緒だわ」
「福富さんって、あの社長賞獲った福富さん?」
「チャンスよ!一緒にお昼誘いましょ」
キャアキャアと騒ぎながら女性社員達は荒北の脇を通り抜け、新開達の方へ小走りで向かって行く。
「……」
その様子を眺め、荒北は自分でも理解の出来ない激しい苛立ちを覚えるのだった。
この後、女性グループに突撃された新開と福富は驚いて逃げて行くのだが、その前に荒北は背を向けて立ち去った。
その晩。
出逢橋で荒北が歌っていると、派手な格好の女性が声を掛けてきた。
「オニーサン、それ儲かんの?」
商売女のようだ。
「一銭も儲かンねェよ」
「じゃあなんで歌ってんの?」
「っせ。アッチ行け」
虫の居所が悪い荒北はイライラしていた。
女は荒北の腕を両手で引っ張って言った。
「アタシと遊ぼ。ホテル行こ」
「!」
カッときた荒北はその手を振りほどき、つい大声で叫んでしまった。
「立ちんぼのくせに汚ねェ手で触ンじゃねェ!!」
「オニーサン。うちの女の子に酷いこと言うねぇ」
「!」
荒北はすぐに3人の男達に囲まれてしまった。