大人の問題 (短編2頁)
待「荒北ぁ!」
荒「うわッ!ビックリしたァ!」
飛び上がって振り向く荒北。
待「ななななんじゃあソレ!歯形!」
荒「えッ」
ハッとして首の後ろを手で押さえる。
金「……し、新開か?」
恐る恐る尋ねる金城。
荒「ちっ。やっぱ痕残ってたかァ。あの野郎」
待「ゆ、ゆうべ、新開と何しよったんぞ!」
金「待て!言いたくないなら言わなくていいぞ荒北!というかオレは聞きたくない!」
動揺している待宮と金城。
荒「ゆうべメシ食った後、アイツが夜景のキレイなとこあるから行こうって山の上行ってさァ。確かにキレイだったから窓から見てたら……ガリッて」
待「ガリッ……」
金「ガリッ……」
なぜか復唱する二人。
荒「痛てェ!って振り向いたらアイツ『ごめん、歯が当たった』って。まったくよォ」
待「歯が……」
金「謝るとこ、そこか?」
荒「今日慰謝料代わりに高いメシ奢らせてやろ」
荒北は部室を出て行った。
待「……」
金「……」
呆然と立ち尽くす二人。
待「……どう思う?金城」
待宮が口を開く。
金「……どうって、明らかに新開はその気だろう」
待「……じゃなぁ」
金「しかし、荒北は新開の気持ちに全く気付いていないぞ」
待「それが問題じゃなぁ」
金「ハッ……そうか」
待「なんじゃ」
金城はある事に気付いたようだ。
金「新開の言っていた“アピール”というのは、オレ達に対して……」
待「え?……ちゅうことは、まさか“靖友はオレのもんだから”っちゅう意味け?」
金「おそらく牽制だろう」
待「あっ……アホかアイツぁ」
呆れる待宮。
待「……どうしゆう?荒北に警告するけ?」
金「いや……二人の問題だ」
待「じゃがこのまま放っといちゃあ近々新開に食われっぞアイツ」
金「うーん……しかしデリケートな事だし……」
二人は悩んだが、もう大人なんだから、という理由で干渉しないことに決めた──。
~翌日~
荒北は朝からボーッとして誰とも会話しない。
待「荒北が変じゃ!」
金「ゆうべ何かあったようだな」
アタフタする二人。
荒北を観察していると……。
遠い目をしたかと思うと、
ポッと頬を赤らめ、
ガリガリと頭を掻き、
顔を手で覆い、
溜め息をつく──。
待「ありゃあ……ゆうべついに食われよったな。絶対」
金「やめてくれ!想像したくない!」
待「なんか……荒北のヤツ、色っぽくなっちゅう……」
金「よせ!オマエまで!」
自分の人生は自分で決める。
それが大人になるということ ──。
おしまい