勇者ヤストモの冒険 (長編15頁)





8合目まで登ると、男が待っていた。

 

 

鞠「人間のくせによくここまで登って来ました。クスクス。でも、ここで終わりです」

 

サラサラで長めの髪に切れ長の瞳。

女性のような美しい風貌をしている。

 

 

 

荒「3人目だな。テメェを倒してボスに会うぜ」

 

警戒する荒北達。

 

 

 

鞠「ボクの名は岸神小鞠。ここを通すわけにはいきません」

 

小鞠はニタリと笑った。

 

 

 

福「オレの番だな」

 

福富が一歩前に出る。

 

 

福「福富寿一、参る!」

 

斧を構える福富。

 

 

鞠「!」

 

福富を見て目を見開き、全身を舐めるように眺める小鞠。

 

鞠「……あはっ。福富さん、アナタ、とても最高(いい)筋肉(にく)を持ってますね」

 

福「ムン!」

 

斧を振り降ろす福富。

 

 

しかし小鞠は身体を蛇のように伸ばし、ヒョイと避けた。

 

 

荒「福ちゃん!」

新「寿一!」

東「こやつ、今までのザコと違うぞ!」

 

 

 

鞠「ハァ……躍動する筋肉(にく)。美しい。福富さん、ボクはアナタのその筋肉(にく)に触れたい!」

 

小鞠は頬を紅潮させ、更に身体を伸ばして興奮気味に福富に近付いていく。

 

 

鞠「ハァ、ボクのこの身体で……ハァ、アナタをぐるぐる巻きにして……そして……」

 

福富は斧を構え、目を閉じてじっと動かない。

 

 

 

鞠「あっ……ぱあ!!」

 

目を血走らせ、涎を垂らしながら一直線に福富に襲いかかる小鞠。

 

福富はギリギリまで引き付けてから、カッと目を開いた。

 

 

 

福「斧無双!!」

 

 

 

スパッ!スパッ!スパッッ!!

 

鞠「ぎゃああああ!!」

 

 

小鞠の長い身体は福富の斧で斬り刻まれてしまった。

 

 

鞠「あはぁ……最高(いい)……。福富さん……もっと……」

 

 

 

恍惚の表情を浮かべたまま、小鞠の身体はスーッと消えて無くなってしまった。

 

 

 

 

東「フクに指一本も触れられなかったな」

福「ただの変態だ」

 

 

新「さぁ、残るは……」

荒「ああ。魔王御堂筋のみだ」

 

 

 

荒北達は頂上目指して一気にケイデンスを上げた。















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イイネ