勇者ヤストモの冒険 (長編15頁)
~京都伏見山~
荒「……ついに来たな」
荒北達はロードを停め、京都伏見山を見上げる。
東「この日のために練習を重ねてきたのだ」
新「オレのウサギ達も早く暴れたくてウズウズしてるぜ」
福「万全だ。オレ達は、強い!」
荒北は仲間達に向かって言う。
荒「必ず魔王御堂筋を倒す!そして全員で村へ帰るんだ。一人もリタイアなんかさせねェ」
4人は手を出して重ねる。
荒「行くゼ!」
「「「おー!!」」」
山の入口へ着くと、誰か一人立っている。
歯に何か金具を装着した、小柄な男だ。
水「止まれ!」
荒「一人目の手下だな」
身構える荒北達。
水「オレの名は水田信行!京都伏見山のキャプテンや!ここの門番を任されている!」
自信満々な表情で立ちはだかる水田。
新「キャプテンなのに門番?」
水田は新開のツッコミに対し大声で威嚇する。
水「御堂筋くんに『水際で敵を阻止するのはキャプテンの重要な役割や。ボクはキミには期待しとるんよ』と言われたんや!」
ニヤリと笑い、両手を高く掲げる水田。
水「フェイズ49は入山封じや!絶対に死守や!ゆずらへん!御堂筋くん!見とってやオレの仕事!御堂筋くん!」
東「メラ」
水「ぎゃーーーっ!」
水田は一瞬で跡形も無く消滅した。
荒「ハエみてェな奴だったな」
荒北達は悠々と入口を通過した。
5合目まで登ると、また一人立っていた。
石「そこまでだ!」
オールバックで真面目そうな顔つきをした男だ。
荒「3人の手下のうち2人目だな」
武器を構える荒北達。
石「オレの名は石垣光太郎。京都伏見山の主将や」
福「さっきの門番がキャプテンで、今度は主将……?」
荒北達は意味がわからない。
石「うちの御堂筋が色々迷惑をかけとるのは知っとる……。やけど、あいつが帰ってこれる場所はここしか無いんや……」
東「泣き落としか?」
石「うちらはこうして生きていくしかないんや。形は少しいびつかもしれんけどこれが、オレたち京都伏見というチームや!!」
荒「開き直りやがった」
石垣は何か呪文を唱え始めた。
新「根は悪い奴じゃなさそうだ。楽に逝かせてやろう」
新開は右手を挙げ、指をパチンと鳴らした。
ドドドド……。
どこからともなくウサギの群れがやって来て、石垣に飛び付く。
石「なんや!ウ、ウサギ?」
ウサギ達は石垣にギュウギュウと身を押し付け、全身を圧迫していく。
石「ううっ!なんて可愛い……がまんやがまん!がまんや石垣光太郎!!……ああ……やけど、萌え……萌え死ぬ……これがキュン死というやつ……か……」
バタッ。
石垣は安らかな表情で圧死した。
身体が次第に砂のようにサラサラになり、風に散っていく。
荒「さァ、先に進もうぜ」
荒北達は更に登って行った。