勇者ヤストモの冒険 (長編15頁)
道中の村の酒場で夕食をとっている荒北達。
マンモス肉のような骨付き肉に、芋や豆の煮物、山盛りフルーツなどがテーブルに並んでいる。
ビールの入った大きなジョッキもいくつか空にした。
荒北が仲間達の顔を見渡して言う。
荒「なんかこの4人で食事してっと……」
福「うム。なんというか……」
東「違和感が無いというか」
新「懐かしい感じがするな」
顔を見合せる4人。
荒「なんでだろうな」
福「全員初対面の筈だが」
東「以前にもよくこの4人で食事していたような」
新「別の世界線でもオレ達仲間だったのかもよ」
荒「別の世界線か……」
福「その世界線でも4人でロードバイクに乗っていたと?」
東「結構強いチームで、大会に出ていたりとかな」
新「優勝経験豊富で、王者って呼ばれてたりとかね」
全員「……」
黙り込む4人。
しかしすぐにドッと笑い、
全員「まさか~。ないない」
と否定した。
荒「ところで、魔王のことなンだが……」
荒北が仕切り直して今後の打ち合わせを始める。
福「ム。どの程度の強さなのか」
東「扱う魔法の種類も知っておきたいぞ」
新「靖友、好きな食べ物は?」
荒「え?タケノコ」
新「タケノコか~。オレも大好き」
福「手下もきっと手強いだろう」
東「もっと情報収集せねばならんな」
新「出身村で許嫁が帰りを待ってるとかは?」
荒「そんなモン居ねェよ」
新「良かった。まぁ、居ても奪うけどねオレ」
バン!
東「隼人!真面目な話をしている時に目の前で堂々と口説くでない!」
福「仮にも勇者だぞ」
東堂と福富がテーブルを叩いて苦言を呈する。
新「勇者。オレの初恋の相手が勇者だなんて。運命だよなぁ。最高」
荒「ちょ、近けェ」
新開は全く気にせず、荒北の肩に腕を回して顔を近付ける。
東「そもそも隼人の行為はセクハラではないのか!」
福「しかしイケメンがセクハラしても罪にはならないと聞いたぞ」
東「どこの法律だそれは!」
荒「どっちにしろみんな酔っ払ってるし打ち合わせなんか無理か。今夜はここで宿を取ろうぜ」
荒北は店員を呼んで、上階の宿の予約をする。
新「オレ、靖友と一緒の部屋……」
荒「シングルルーム4つネ」
福「シングルルーム4つだ」
東「シングルルーム4つで頼む」
店員「シングルルーム12個ですね」
そして夜が明けた。
(ファンファーレ)