勇者ヤストモの冒険 (長編15頁)
荒「速くて楽でイイなァこれ」
ロードを手に入れた荒北と福富は、順調に移動していた。
しかし山越えでモタつく。
福「登りはリズムだ」
荒「ゼェゼェ。ちょっち休憩」
自販機でベプシを買い、座って休む二人。
ガサガサッ!
その時、背後の茂みから音がした。
東「ウワッハッハッハッ!天はオレに三物を与えた!!」
荒「!」
福「!」
ブン!
すかさず斧を振り降ろす福富。
東「うおぅ!」
慌てて避ける怪しい青年。
東「危ないではないか!」
怒って福富に指を差す。
荒「なんだテメェ。怪しいな。頭に変なモンつけやがって」
マスターソードを構える荒北。
東「オレは怪しくなどない!オレが用があるのは貴様の持っているそのキビ団子だ!」
福「山賊だな」
福富は斧を振り上げる。
東「待て!」
荒「待て!」
怪しい青年と荒北が同時に福富を止めた。
荒「オメー今、キビ団子と言ったな」
マスターソードを降ろして問う荒北。
東「ああ言ったとも!そのキビ団子が気になって仕方がない!オレのグルメの舌が疼くのだよ!ひとつ分けてはくれんかね。礼はする。……そうだな。この登りを引いてやろうではないか。なにしろオレは山神だからな!ワッハッハ!」
福「よく喋る男だ」
荒「山神?オメー、神様なのか?」
東「自称だ」
荒「殺すぞ」
怪しい青年にキビ団子を渡す荒北。
東「うむ!美味だ!パワーがみなぎるようだ!」
荒「いちいちうるせェ」
怪しい青年は食べ終わると自己紹介をした。
東「オレの名は東堂尽八。職業は、魔法使いだ!」
福「魔法使い?」
荒「スゲェ!」
東「ワッハッハ!」
得意気に高笑いする東堂。
東「ほう!魔王を倒す旅とな!面白そうではないか!オレもついて行ってやろう!」
一通り自己紹介を終え、東堂は二人に興味を持つ。
荒「それは構わねェが……。オメー、どんな魔法使えるんだ?」
東「よくぞ聞いてくれた!見るがいい!そしてひれ伏せ!」
東堂は不敵に笑う。
そして草むらの空いたスペースに向かって手を伸ばし、呪文を唱えた。
東「メラ!」
ボッ。
草むらに一瞬火がつき、すぐに消えた。
荒「……」
福「……」
東「この呪文があれば、野営もバーベキューも思いのままだ!キビ団子だって炙って食えば更に美味になろう!ワッハッハ!」
荒「……他には?」
東「うむ!驚くな!見よ!」
東堂は木に向かって手をかざし、呪文を唱えた。
東「ヒャド!」
木の幹が一瞬ペキペキッと凍り、木屑がポロポロと落ちた。
荒「……」
福「……」
東「この呪文があれば、夏は涼しくジュースも冷やせオイ!どこへ行く!」
ロードに跨がり、荒北と福富は立ち去っていく。
東「オレも一緒に行くと言っただろうが!待て!!」
東堂は愛車リドレーに跨がり、慌てて二人の後を追いかけた。
東堂尽八が(無理矢理)仲間になった!
(ファンファーレ)