勇者ヤストモの冒険 (長編15頁)
頂上は禍々しい漆黒の雲で覆われていた。
数百数千もの蝋燭に囲まれた巨大な祭壇。
祭壇にはいくつものガンプラが陳列されている。
その手前で、魔王御堂筋は背を向けて胡座をかいていた。
ガンプラを両手に持ち、ブツブツ言って遊んでいるようだ。
東「……さすがに空気が違うぞ」
福「後ろ向きでも威圧感がある」
新「話し掛けにくい雰囲気だな」
東堂達は圧倒されている。
しかし荒北は臆せず前に出た。
荒「っせ。サクッと終わらせてサッサと帰ンぜ」
御堂筋の背中に向かって声を掛ける。
荒「オイ!魔王!こっち向けコラ!」
御「……」
御堂筋はゆっくりと振り向いた。
御「誰や。ボクが遊んどん邪魔するんは」
荒「オレ達は、」
新「勇者靖友とゆか……」
東「チーム荒北だ!!」
新開のセリフを遮って東堂が叫んだ。
御「なんや。量産型か」
御堂筋は興味無さ気にそっぽを向いた。
荒北はマスターソードを構え、一歩一歩近付きながら御堂筋に語り掛ける。
荒「テメェが石にした村を元に戻せ。それから各村の御神体を返せ。それから今後二度と人間様に迷惑をかけないと誓え。そうしたら、許してやんよ」
御堂筋は荒北をチラッと見て言った。
御「……プププ。嫌や」
荒「交渉決裂だな」
ザン!
荒北はマスターソードを地面に突き刺した。
地割れが足元まで届き、よろめく御堂筋。
御「!」
御堂筋はジロリと荒北を睨み付けた。
ビカッ!
稲妻が荒北を襲った。
荒「!」
飛び退ける荒北。
新「靖友!」
御「ザクが来るとこ違うんよ」
御堂筋はユラリと立ち上がり、荒北達の方を向いた。
5mはあるかという魔王御堂筋の身長。
紫色のマントを広げると更に大きく見える。
バリバリバリ!!
御堂筋は両手を挙げ、荒北達に向かって電撃を浴びせた。
荒「危ねェ!」
バキャーーン!!
荒北が仲間達の前に立ち、マスターソードで電撃を跳ね返した。
御「弾いた?……なんやその剣」
不思議がる御堂筋。
荒「テメェを倒すために生まれた剣だ」
マスターソードを御堂筋に向ける荒北。
御「ボクを倒すぅ?……プププ」
ニタリと笑う御堂筋。
御「キモ!」
御堂筋はマントを羽ばたかせた。
突風が荒北達を襲う。
荒「ううっ!」
荒北達は後ずさったが、体勢を立て直す。
荒「全員で連携して行くぜ」
福「ああ」
東「援護は任せろ」
新「本気出すかな」
新開は右手を掲げた。
ドドドド……。
どこからともなくウサギ達が現れ、次々と重なっていく。
なんとウサギ達が……。
合体してキングウサ吉になった!
ウ「ピキーーッ!!」
雄叫びをあげるキングウサ吉。
御「ザクぅ……」
不愉快そうにしている御堂筋。
荒「テメェから見たらオレ達人間は量産型ザクかもしんねェ。だがな、テメェは今日、その量産型ザクに倒されンだよ!!」
挑発する荒北。
御「許さん。許さんよ。ボクの静かな時間を邪魔したザクぅ」
魔王御堂筋と荒北達の戦いが、今始まる──!