アイラブ珍獣 (中編4頁)
「凶悪な人相をしたスケ番が竹刀を振り回しながらこのアパート付近に潜伏しているようだと多数の通報がありまして」
「そ、そうですか。怖いですね」
「戸締りをしっかりして、不審者を見つけたらすぐに連絡下さい」
「はい。ありがとうございます……」
パタン。
玄関を閉め鍵をかけて部屋に戻って来ると、荒北がベッドの上で膝を抱えて座っていた。
「珍獣だの不審者だの凶悪犯だの……。新開にも拒否られるし……。わァったよ。もう二度と女装なんかしねェよ畜生」
いじけている荒北。
「しかし靖友の女装なんて超レアだったな。しまった、脱がす前に写真撮っときゃ良かった」
残念がる新開。
「写真ならあるぜ」
「え?」
荒北は脱がされたスカートのポケットから自分のスマホを取り出した。
「自撮りしたやつ。ホラ」
それは、スケ番姿の荒北が竹刀を肩に担ぎヤンキー座りをして斜めにカメラを睨み付けている写真だった。
~明早大学~
翌日。
「ふふ……」
大講義室で新開が昨日荒北からもらった写真を眺めて微笑んでいると、福富がその後ろを通って隣の席に座った。
「なんだその凄まじい女は」
写真を覗き見て素朴に感想を述べる福富。
新開は慌てて画面を閉じる。
「昔、再放送でやってた学園ドラマにそんな女がいっぱい出ていたな確か」
「うん。スケ番だよ」
「しかし今の写真の女、どこか見覚えがある。昔の有名女優だったか、それとも芸人か……」
考え込む福富。
新開は頬を赤らめながら言った。
「オレ、このコにメロメロなんだ」
それを聞いて、無表情だが明らかに呆れた口調で福富は言った。
「……いつまでたってもオマエに彼女が出来ない理由が解った気がする」
ハッピーハロウィン。
おしまい