アイラブ珍獣 (中編4頁)
「なっ、なにその格好!なんのコスプレ!?」
腰を抜かして座り込み、青冷めた表情で尋ねる新開。
荒北は、ロングのくるくるパーマのカツラを被り、ヘソが見えるほど丈の短いセーラー服に、地面に擦りそうなほど長い丈のヒダスカートをはき、手には竹刀を持っていた。
目には付け睫毛。
青いアイシャドウ。
そして真っ赤な口紅。
「これァ、昭和のスケ番(死語)だ」
怯える新開を見下ろして言った。
「すっ、スケ番……」
ドン引きしている新開。
後退りながら質問する。
「なんでっ?なんでそれをチョイス?」
頭の上にハテナマークが大量に出ている新開。
荒北は新開の目の前にヤンキー座りをして経緯を説明し始めた。
「……ハロウィンといやァ仮装だろ?仮装といやァ女装だろ?で、コスプレ衣装のサイトを吟味してたんだけどよ。メイドとかナースとかチアガールとか色々あったけど、みんなミニスカートなんだわ。足見えてたらすぐ男って判っちまうだろ?そしたら電車乗れねェだろ?」
「電車に……乗って来たのか……その格好で」
荒北は得意気な表情で続ける。
「そこでこのスケ番よ。これなら足隠れるし、カツラで顔も隠れるし、元ヤンのオレにピッタリだろ。来る途中ガキには珍獣呼ばわりされたけどよ、オッサン2人にナンパされたぜ。ギャハハ」
ご機嫌な荒北。
「……事情は解った」
新開は気を落ち着かせながらも目を逸らし、立ち上がった。
「え、えっと……それじゃ座っててくれ。パンプキンケーキ買ってあるんだ」
逃げるようにキッチンへ移動しようとする新開。
ガシッ!
荒北は新開の腕を掴んだ。
「ケーキなんかよりもヨ」
「わっ!」
ドサッ!
新開の腕を引き寄せ、ベッドに押し倒し、上にのし掛かる荒北。
「ちょ、靖友」
「まずは、ヤろうぜ」
ペロリと自分の唇を舐め、新開のシャツのボタンを外し始める荒北。
「ヤるって……」
真っ青になっている新開。
「セックスに決まってンだろ!オレぁなァ!この格好のままオメーを襲い受けすんのをずっと楽しみにしてたンだヨ!!」
「そっ、その格好のままで!?」