アイラブ珍獣 (中編4頁)





所々に煌めく大小のカボチャ。

思い思いに仮装し練り歩く人々。

街は華やぎ活気付いている。

 

そう、今日はハロウィン。

 

 

 

 

荒北は初めての仮装に胸踊っていた。

誰も自分と気付かない。

 

その状況で電車に乗る。

スリル満点だ。

 

 

 

大学生になってから最初のハロウィン。

今夜は恋人である新開のアパートで一緒に過ごす約束になっている。

荒北は張り切って数日前から仮装の準備をしていた。

新開の驚く顔が目に浮かぶ。

彼は喜んでくれるだろうか。

 

 

 

 

帰宅ラッシュ時刻の電車内。

混んでいる筈の車両だが、荒北の周りだけは何故か人が寄り付かず空いていた。

しかしウキウキ気分の荒北はそれに気付いていない。

 

 

 

 

新開のアパートのある最寄り駅に着く。

 

駅前に出ると、賑わう人々が一斉に荒北に注目した。

と同時に、モーゼのようにサーッと荒北の前の道が空く。

 

 

 

「なにあれ」

「化け物?」

「ママー、あれ珍獣?」

「しっ!見るんじゃありません!」

 

荒北を遠巻きに見る住民達が警戒心を露にする。

 

 

 

そこへ会社帰りの中年リーマン2人組が荒北に近寄って来た。

 

「おっ!懐かしいコスプレだねオネーサン!」

「似合ってるよ。一緒に呑みにいかない?」

 

 

荒北はキッ!と睨み付け、威嚇する。

 

「寄ンじゃねェタコ!!」

 

 

それを聞いて喜ぶ中年リーマン達。

 

「うおっ!いいねぇ!」

「なりきってるねぇオネーサン!」

 

 

バシーーーン!!

 

荒北は持っていた竹刀を道路に叩き付けて怒鳴った。

 

 

「オレぁ男だ!!」

 

 

「ええっ?」

「あっホントだ!」

 

中年リーマン達はガッカリして去って行った。

 

 

 





ピンポーン。

 

新開のアパートに着き、インターホンを押す。

 



「はーい」

 

ガチャ。

 

新開が玄関を開ける。

荒北はおなじみのセリフを言った。

 

「トリック・オア・トリート」

 

「誰!?……えっ?やっ、靖友??」

 

 

荒北は驚く新開の顔に満足してニヤリと笑った。

 

 

「お菓子くんなきゃイタズラすんぞゴラァ!」

「うわああああ!」

 

 

荒北は玄関ドアを勢い良く開放し、固まっている新開を強引に押し戻しながら中へ入って行った。

















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イイネ