続・喫茶チャリダー (中編7頁)★オススメ
~日曜日~
ブスーッ。
真波がふくれている。
真「なんで新開さんがバイトしてんですかー?オレにはダメって言ってたのにー!」
ウサギ柄のエプロンを着けてカウンター内で皿洗いをしている新開を指差し、荒北に文句を言う真波。
新「悪いな真波。またオレの勝ちだ」
真波にウィンクして笑う新開。
荒「コイツぁ居候のタダ働きだ。穀潰しだヨ」
真「居候って、まさか一緒に住……」
カランコロン。
真波が質問していると、小野田と今泉が息を切らせながら入ってきた。
小「こ、これ!」
DVDを手に掲げている。
壁のモニターで再生すると、それは空港で外国人にインタビューする民放番組の一場面だった。
日本人男性二人が抱き合って、周りに祝福されているシーンが映っている。
荒「げッ!」
新「これは!」
モザイク処理されているが、知人が見れば新開と荒北だというのは明らかだった。
しかも、二人にはモザイクがかかっているが周りのモブはそのままで、観客の中に福富がしっかり映っている。
小「これってやっぱり……」
今「……ですよね?」
小野田と今泉が二人に同意を求める。
二人は冷や汗を流しながら、どう答えようか迷っている。
黒「いやっほー!オレの勝ちぃ!」
映像を見て、黒田が叫んだ。
泉「ボクだって勝ちだ」
葦「ボクも」
寒「なんの話だ?」
喜んでいる黒田達に寒咲が尋ねる。
黒「賭けてたんスよオレ達!新開さんと荒北さんがくっつくかどうか!オレは絶対くっつくって確信してたね!」
泉「ボクもくっつく方に賭けたんです」
葦「ボクもです」
寒「それじゃ全然賭けになってねぇじゃねーか」
寒咲は荒北と新開に向き直って言った。
寒「つまりオメー達は、ぼっちのオレ達を差し置いてリア充入りした、と」
荒「いや、その……」
寒「とぼけんなよ荒北ぁ。バレてんぜ、その指」
寒咲は荒北と新開の手元を指差した。
二人の指には、自転車の絵が対になったペアリングがはまっていた。
新「……ははっ。もう誤魔化しきれないな」
全員の視線を浴び、諦めた様子の新開。
荒北は開き直ってみんなに叫んだ。
荒「あァそうだヨ!!オメーら!今日はオレの奢りだァァ!!」
全員「ぃやったーー!!」
店内で歓声が上がった。
福「……で、どうするんだこれから」
福富がカウンターでアップルパイを食べながら二人に問う。
新「フリーで大会に出るよ。成績さえ残していれば、そのうち声も掛かるさ。外国企業なら偏見も無いしね」
荒「これからはライバルだな、福ちゃん」
福「ム……。オマエ達がタッグを組むとはな。強敵になりそうだ」
新「負けないよ、寿一」
新開は福富にバキュンポーズをとった。
真「ねーねー!オレも一緒に住みたい!」
荒「何言ってンだオメーは」
真「オレも混ぜて下さい!3ピ……」
ゴゥン!!
新開がフライパンで真波の頭を叩いた。
喫茶チャリダー。
自転車好きの集う店。
皆の笑顔を取り込んで、今日も一日が終わる ──。
おしまい