続・喫茶チャリダー (中編7頁)★オススメ
~日曜日~
昼間の喫茶チャリダー。
店内は馴染みの仲間達が数人寛いでいた。
奥のソファ席では泉田と黒田が楽器を弄って遊んでいる。
いつもツール・ド・フランスの映像を流している壁のモニターでは、小野田が『劇場版ラブヒメ』のブルーレイを勝手に流し、今泉と真波と一緒に鑑賞している。
店内入口を入って左手のグッズコーナーでは寒咲が腰を屈め小物類を眺めていた。
自転車をデザインしたキーホルダーやカップ等が並んでいる。
荒「また色々増えたでしょう」
荒北が声を掛ける。
寒「オメーが帰国する度に面白いモン入ってるから楽しみでなぁ。オレんとこもこういうの扱おうかなぁ」
荒「かぶることしないで下さいヨ。……あ、そうだコレ」
寒咲をアクセサリーコーナーへ導く。
荒「カップル客に人気だからまた買い付けたんス。ホラ、自転車の絵が対になったペアリングなんスよ」
寒「おー!イカスじゃねぇか!……妹が好きそうだなぁこういうの」
荒「妹サンじゃなくてェ、自分居ないんスか?こういうの渡す相手」
寒「てめ……!痛てぇとこを!オメーこそ居ねぇのかよ」
荒「……居ませんねェ。おかげで好き勝手出来ますけどネ」
寒「お互い、自転車が恋人ってぇやつだな」
荒「お互いどころか……見て下さいヨ、この光景」
荒北は店内を指し示す。
仲間達がグタ~ッとダラダラ過ごしている。
荒「コイツら日曜日だってェのにバイトにも行かず遊びにも行かず、ここで一日中ダラダラダラダラ。いい歳してみんな彼女居ないんスよ」
寒「……うーん。まるで保育園だなこりゃ」
寒咲が腰に手をあてて溜め息をつく。
その時、隣でグッズを物色していた葦木場が言った。
葦「あ!新商品!これ下さい荒北さん」
葦木場が手に持っているのは、貼るだけでスピードアップ効果が得られるというステッカーだった。
寒「そ、それは……!」
寒咲がドン引く。
荒「葦木場。それはシャレで置いてある物で……オイテメェ!まさか!」
葦「え?」
荒北は慌てて外へ飛び出し、駐輪場へ走って行った。
その後、怒りの形相で店内に戻ってきて叫んだ。
荒「泉田ァ!黒田ァ!ちょっと来い!!」
泉「はい?」
黒「何事スか?」
二人が飛び上がる。
荒「オマエら二人もついてて、これを許してたのかァ!」
荒北は店内に持って来た葦木場の自転車とヘルメットを指差す。
フレーム内部とヘルメット内側には、魔除けの札のようにビッシリとステッカーが貼ってあった。
泉「アッブ!!」
黒「これは!!」
衝撃を受ける泉田と黒田。
葦「すごい効果あるんですよこれ。足が軽くなって」
葦木場がニコニコして言う。
寒咲は頭を抱えて葦木場に説明した。
寒「それはな……。昔からよくあるオカルトグッズだ。詐欺商品なんだよ」
葦「え?ええ!?で、でも、だって……」
驚いてオロオロする葦木場。
荒「でもでもだってじゃねェ!!」
ドガッ!
葦木場を蹴り倒す荒北。
葦「キャー!」
荒「テメェはッ!こんなッ!インチキ商品ッ!貼りまくってッ!伝統ある箱学のッ!エースをッ!」
ドガッ!ドガッ!
蹴りまくる荒北。
葦「痛ーい痛ーい!」
泉「あ、荒北さん、乱暴は……」
泉田が止めに入る。
荒「泉田ァ!主将が何やってたんだァ!」
泉「アブーッ!すみません!」
矛先が向いてビビる泉田。
荒「黒田ァ!」
黒「はっはい!」
直立する黒田。
荒「葦木場と泉田を殺せ」
黒「いっ!?」
葦「!」
泉「!」
両手を身体の正面に構え、葦木場と泉田にジリジリと近付く黒田。
葦「ユ、ユキちゃん……」
泉「ユキ、やめろ」
後退り怯える二人。
黒「すまねぇ二人とも。荒北さんの命令は絶対だ」
葦「キャー!」
泉「アブー!」
黒「オレだって辛いんだーっ!」
3人は店を飛び出して行った。