喫茶チャリダー (中編6頁)★オススメ





〜昼下がり〜

 

 

 

カランコロン。

 

 

 

葦「あー!涼しー!生き返るー!」

泉「どもー!お疲れ様でーす!」

黒「アイス!荒北さんアイス食わせて!パフェとか!」

 

 

 

ドヤドヤと騒がしく入って来たのは、葦木場、泉田、黒田の3人組だった。

 

この丘は3人の大学の練習コースになっていて、昼過ぎに時々こうして店を訪れる。

 

 

 

荒「練習中にサ店たァいい根性してんなオメーら」

黒「練習ルートにこんなオアシス建てるのが悪いんスよ」

 

黒田達は4人掛けテーブル席でグッタリしている。

 

 

 

荒「うらァ!」

 

荒北がテーブルにドン!と置いたのは大人数用パフェだった。

 

黒「でけぇ!」

泉「こ、これ、ビール用ピッチャーじゃないですか!」

葦「中ジョッキ15杯分ですよ!」

荒「早く食わねェと溶けンぞ」

 

慌ててパフェを貪る3人組。

 

 

 

 

 

カランコロン。

 

次に入って来たのは普通の一般男性客だった。

 

 

荒「いらっしゃいませ」

 

荒北はテーブルにお冷やとおしぼりを置く。

 

 

客「灰皿」

 

男性客は吸いかけの煙草を手に持っていた。

 

荒「すいません、うち禁煙なんです」

 

客「ああ?」

 

男性客は煙草の灰をテーブルにトントンと落とした。

 

荒「こちらで処分しますんで、煙草渡して頂けますか」

 

 

男性客は声を荒らげた。

 

客「俺が吸いてぇから吸ってんだ!黙って灰皿の代わりになるモン持って来い!お客様は神様だろ!」

 

その声にビックリして、泉田達が振り向く。

 

 

 

荒北は男性客から煙草を素早く引ったくり、前髪を掴んで頭部を後ろにギリギリとひん曲げた。

 

客「痛ててててて!」

 

黒「荒北さん!」

 

黒田が思わず立ち上がる。

 

 

荒北はそのまま火のついた煙草を男性客の眉間に近付けた。

 

客「や、やめろ!」

 


黒「荒北さん!相手は素人さんスよ!」


客「ヒー!」 


黒田の言葉を聞いてビビる男性客。

 



 

荒北は男性客に顔を近付けて静かに言った。

 

 

 

「ここでは、オレが、神だ」

 

 

 

 

 

 

店外では、昼食をとりに来た新開が駐輪場に自転車を置いていた。

入口ドアを開けようとすると……。

 

 

バン!

 

客「頭イカれてやがる!」

 

勢いよくドアが開かれ、中から男性客が飛び出してきて新開とぶつかった。

 

新「おっと」

 

よろける新開。

 

それを目撃した荒北が男性客を追いかける。

 

荒「人にぶつかったら何か言うことあンだろゴラァ!」

客「ヒー!すんませーん!」

 

丘を転がりながら逃げて行く男性客。

 

 

 

 

 

新「靖友!戻ってこいよ」

 

新開が呼び止めると、荒北は追いかけるのをやめた。

戻ってきて新開に駆け寄る。

 

荒「大丈夫か新開。怪我は?」

新「大袈裟だなぁ。全然なんともないよ」

 

ニコニコしている新開。

 

 

新「また煙草客?」

 

同じような光景を何度か見ている新開は呆れたように尋ねた。

 

 

荒「素直に聞いてくれる客にはオレだって何もしねェよ。だが……ここはスポーツ選手の集まる店だ。害になるモンは排除しねェと」

 

 

荒北の、仲間に対する愛情の深さをよく理解している新開は、優しく荒北の肩に手を置いた。

 

 

 

 

店内に戻って来た荒北と新開を見て、黒田達がホッとする。

 

泉「アブぅ。どうなることかと思いましたよ」

黒「加勢に行く準備は出来てましたけどね」

葦「見入ってたらパフェ溶けちゃいました……」

 

荒「驚かせて悪かったなオメーら。コーヒー奢ってやっから許せ」

3人組「やったー」

 

 

 

新「腹減ったよ。オレもなんかちょうだい」

荒「あァ、待ってろ。すぐ作ってやんよ」

 

荒北はカウンターの中に入って行った。

















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イイネ