喫茶チャリダー (中編6頁)★オススメ
カランコロン。
田「毎度ー」
何袋ものパンを抱えて入って来たのは、田所だった。
家業のパン屋も田所の代になってから今や関東一帯に店舗数を増やしている。
荒「ご苦労サン」
新「やあ迅くん。久しぶり」
田「新開、まだ居ていいのか?」
新「ああ。今日はゆっくりなんだ」
田所は奥の食料庫にパンを置きに入って行く。
荒「オメーんとこのバンズ評判イイんだ。次回から2袋増やしてくれるゥ?」
田「おう。ありがとよ」
田所は食料庫から出て来ながらカウンターに座っている待宮をじっと見た。
田「……どっかで見た顔だと思ったら、呉の!」
待「総北の肉弾頭けぇ!オマエ、パン屋だったんか」
数年ぶりに顔を合わせて喜ぶ二人。
高校時代から4、5年経ち、みんな大人になった。
新「ちょっとした同窓会だな」
荒「待宮自体がレアだかンな。田所ォ、ちょっと座ってけ。1杯淹れっから」
田「うお、ラッキー。じゃ遠慮なく」
田所は待宮の隣に座り、会話が弾んでいる。
新「靖友の店に来れば、みんなと会える。……いいな、こういうの。ここに店出して大正解じゃないか」
新開は荒北の顔を見つめて言う。
荒「寂しくねェだろ?」
新「いつでも靖友に会えるようになったのが嬉しいよ」
荒「朝昼晩食べに来ンのァさすがにオメーだけだぜ」
新「だってオレ……」
カランコロン。
新開が何か言い掛けていると、入口が開いた。
寒「荒北ぁ。シャシダイ入ったってぇ?」
入って来たのは寒咲だった。
田「げぇっ!寒咲先輩!なんでこんなとこに!」
寒「何やってんだ田所。油売ってっとオメーの母ちゃんにチクんぞ」
田「ししし仕事っすよもちろん!」
あたふたする田所。
待「総北の……上級生じゃったよな?あん人」
新「ああ。寒咲さんだ。自転車屋さんだよ」
待宮と新開がヒソヒソする。
荒「寒咲さんが探してたヤツ。中古っスけどね」
寒「うわ~、助かるぜ。輸入モン取り寄せるより、オメーの人脈の方が早いわやっぱ。商売敵になりそうだな」
荒「ウチは修理まではやってませんからかぶらねっスよ」
待「シャシダイって……。バイク屋に転業ですけぇ?」
寒「ん?……呉の闘犬じゃねーか。珍しいヤツが居んな。いつからここは動物園になったんだぁ?フレンズ」
田「ジョークがビミョーに古いのが痛てぇ……」
田所が小声で悪口を言う。
荒「チャリにも有効利用出来るらしいぜ。寒咲さん、裏の倉庫に積んでありますんで」
寒「サンキュー。田所ぉ!運べ!」
田「げ!なんでオレが!」
寒「こん中で一番力持ちはオメーじゃねーか」
田「トホホ……」
田所は寒咲に連行されていった。
新「さて、そろそろ行くよ。待宮くん、また来てくれよ」
待「おう。オメーらも一度広島来いや。いいとこじゃけぇ」
新開はニッコリ笑う。
荒「新開」
荒北が新開に何かを放る。
コーヒーの入ったタンブラーだった。
新「サンキュ、靖友。これでまた1日頑張れるよ」
パシッとタンブラーを片手でキャッチすると新開はウィンクして出て行った。
荒「さてと……」
荒北は待宮に向かって言った。
荒「いつまで居る気だオメー」
待「客に言うセリフけソレ!」