喫茶チャリダー (中編6頁)★オススメ





カランコロン。

 

 

待「おう、見覚えのある顔が揃っとるのぅ」

 

 

荒「待宮じゃねェか!」

新「久しぶりだなぁ」

真「オレ達を騙した悪い人だ!」

待「ボウズ、ワシまだそのイメージけぇ」

 

入ってきたのは待宮だった。

真波のセリフに苦笑いしている。

 

 

 

待「金城からオマエが店開いたことは聞いとったんじゃがのぅ、なかなか関東まで来る機会がなくての」

 

カウンターに座り、おしぼりで手を拭きながら待宮はモーニングを注文した。

 

 

 

待宮は大学卒業後広島の地元に帰り、家業の造船関連の町工場を継いでいる。

 

待「昨日呉から横須賀基地にワシも関係した護衛艦が入港っちゅうけぇ、業者と出張ってたんじゃ」

新「あの空母か?すごいじゃないか待宮くん」

待「シーッ!空母ちゃう!護衛艦じゃ!」

 

荒「そうかァ。わざわざ来てくれてありがとナ」

待「な、なんじゃ。素直に礼言われると調子狂うわ。丸くなったんけオマエ」

 

少し動揺する待宮。

 

 

 

待「しかし、なんじゃ“喫茶チャリダー”て。ベタ過ぎじゃろ。もちっとシャレた名前しよんちゅう」

 

待宮は店名にダメ出しをする。

 

 

荒「オレぁ小洒落た中二病な店名付けるヤツぁ許せねェんだヨ。日本人なら日本語で勝負しろってンだ。“喫茶チャリダー”、誰が聞いても自転車好きが集まる店って解り易いダロ?」

待「まあそりゃの……」

新「オレは気に入ってるよこの店名。靖友らしくて」

真「オレも気に入ってまーす」

待「へぇ」

 

 

待宮はコーヒーを淹れている荒北をじっと眺めて言う。

 

待「あのベプシばかり飲んでたオマエがのぅ。コーヒーの味なんかわかるんけ?へへへ」

 

荒北は待宮を睨みながら言った。

 

荒「苦いだけのコーヒーは認めねェ。大事なのは、酸味だ。ウチで出すのはあの幻のコーヒー、トアルコトラジャだ」

待「と、虎ジャン?カープファンのワシに阪神の話しちゅう知らんけぇ」

 

戸惑う待宮にコーヒーを出す。

 

荒「飲め」

待「お、おう。確かにいい香りじゃな。砂糖とミルクくれや」

全員「!!」

 

 

待宮の発言に場の空気が凍った。

 

 

 

荒「待宮……。ここには砂糖とミルクなんてェ白い悪魔は居ねェ」

待「白い悪魔て……。ワシはコーヒーは白い悪魔入れんと飲めんのじゃあ」

 

たじろぐ待宮。

 

荒「男は黙ってブラックコーヒーだ。飲め」

待「な、なんちゅう喫茶店じゃ。ちぃとも丸くなんかなっちょらんなオマエ。客逃すぞ」

 

 

 

荒「ここでは、オレが、法だ」

 

 

 

荒北の迫力に根負けした待宮は、仕方なくブラックのまま口をつけた。

 

待「!」

 

途端に驚く待宮。

 

待「お?おお?」

 

もう一口すする。

 

待「ウマイのう!このコーヒー!これならワシでもブラックで飲めるワ」

 

絶賛する待宮。

 

荒「大人の味を覚えた瞬間だナ。おめでとう待宮」

 

荒北はニヤリと笑う。

 

真波が待宮に笑顔で語り掛ける。

 

真「オレも今までブラック飲めなかったんですけど、ここで荒北さんに大人にしてもらったんです」

荒「誤解招く言い回しすんじゃねェ真波」

 

 

 

真「あっ!もうこんな時間!学校行かなきゃ!」

 

真波が壁にある自転車型掛け時計を見て立ち上がった。

 

 

荒「おう。しっかり勉強して来い」

新「いってらっしゃい真波。また明日な」

待「今度会ったら大人の話しようなボウズ」

 

真「はーい!荒北さん、新開さん、待宮さん、いってきまーす!」

 

 

真波は笑顔で手を振って、シャツの裾をヒラヒラさせながら自転車で丘を降りて行った。

 

 

 

荒「さて、新開、オメーもそろそろ出勤じゃねーの?」

新「今日は遅いんだ。まだここにいるよ」

荒「そうか。二人共、もう少ししたら懐かしいヤツが来るぜ」

 

 

そう言ってる間に、店外に業者の車が停まった。
















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イイネ