チャリデカ2《カジノ編》 (長編20頁)★オススメ
荒北は福富とタッチをして入れ替わる。
バン!
荒北は議長卓を叩いて大声で言った。
荒「後輩共ォ!」
後輩達「はい!」
3人が背筋を伸ばして返事をする。
荒「昨日の負け額を言ってみろォ!」
泉「3万です!」
黒「5万です!」
真「10万でーす!」
泉「満面の笑みで言う額じゃないな、真波」
真「えへへ~」
黒「誉めてねーよ」
昨日大負けした後輩達に荒北は問題を出す。
荒「泉田ァ!」
泉「はい!」
荒「福引きで、千円で1回引けるやつと、千円で5回引けるやつ。どっちを選ぶ?景品はどっちも同じだ」
泉「千円で5回の方です!」
荒「ヨシ。黒田ァ!」
黒「はい!」
荒「競馬で、一度に6頭走るレースと、一度に18頭走るレース。どっちを選ぶ?配当はどっちも単勝2倍だ」
黒「6頭の方っス!」
荒「ヨシ。真波ィ!」
真「はーい!」
荒「パチンコで、千円で30回回る台と、千円で10回回る台。どっちを選ぶ?確率はどっちも1/100だ」
真「30回の台でーす!」
荒「全員正解だ」
後輩達はホッとする。
荒「しかしィ!」
ビクッとなる後輩達。
荒「それなのになぜ昨日負けたァ!」
泉「え?それはやっぱり運が……」
黒「そんな理想通り勝てないっスよ」
真「負けたけど楽しかったでーす」
荒北は静かに言った。
荒「カジノのスロット台やテーブルゲーム。隣の台と微妙に違うって知ってたか?」
後輩達「え?」
荒「どれも1台1台賭け金、役、配当、デッキ数(トランプの組数)、シャッフル数等色々違う」
黒「マジっスか!?」
顔を見合せてざわつく後輩達。
荒「これを知らねェ客が大多数だ。どれも同じと思って適当に座る」
泉「ひどいじゃないですかソレ」
荒「ひどくねェ。ちゃんと見えるとこに掲示してある。じゃねェと違法だからな。気付かねェ客がバカなんだ」
真「うわーい」
真波が頭を抱える。
荒「パチンコと同じだ。1台1台釘が違う。見りゃアすぐ判るのに誰も見ようともしねェ。どれも同じだと思って適当に座る。勝ち負けは“運”だ、ってな」
後輩達「……」
荒北は全員の顔を見渡して言う。
荒「みんな勝ちてェから打つんだよな。なのに、なぜ勝つ努力をしねェんだ?スポーツだったら勝つためにちゃんと戦略練るじゃねーか。なぜギャンブルでもそれをしない?なぜ全てを放棄して運任せにする?」
全員黙り込む。
荒「じゃァ、ちょっと質問を変えるぜ」
荒北は今度は上級生組に質問した。
荒「ギャンブル依存性を治すにはどうしたらいい?ハイ新開ィ!」
新「えっ?えーと、家族や友人の温かい愛情!」
荒「ハズレぇ!ハイ福ちゃん!」
福「スポーツで汗を流す!」
荒「ハズレぇ!ハイ東堂!」
東「えー……」
荒「全員ハズレぇ!」
東堂がなにやら喚いているが無視して荒北は話を続ける。
荒「正解は……」
全員が注目する。
荒「勝ち方を教えることだ」
全員「えーっ?」
驚く面々。
東「それでは本末転倒ではないか!」
荒北を指差して反論する東堂。
荒北はみんなの席の周りをゆっくり歩きながら解説する。
荒「ギャンブル依存性の問題はなんだ?負け過ぎて借金して家庭崩壊だろ。勝てるようになりゃア借金しねェどころか金持ちだァ。家庭円満」
東「極論だ!」
荒「だが、誰もこの方法を思いつかねェ。だからギャンブル依存性はいまだに無くならねェ。そもそも勝ち方を教えられる職員がいねェ」
東「貴様なら教えられるとでも言うのか!」
荒北はニヤリと笑う。
荒「ああ、その通りだ。依頼がありゃア、すぐにでも受けてやんよ」
東「ぬ……」
荒北の自信満々な表情に怯む東堂。
新「靖友……なんでそんなにギャンブルに詳しいんだ?昨日おめさん、自分はギャンブルしないって言ってたじゃないか」
不思議そうに尋ねる新開を荒北は指差して言った。
荒「イイ質問だ新開ィ!」
荒北は議長卓へ戻って話し始めた。
荒「オレぁ世界中のカジノを廻った。全戦全勝だ」
全員「えーっ?」