チャリデカ2《カジノ編》 (長編20頁)★オススメ
Mr.ピエールがチーム箱学に感謝の意を述べる。
同窓会を兼ねた祝勝会は、来週末盛大に開催される予定だ。
賭け金は、最後のゲームが無効となったため、オールイン前の額を獲得金とした。
充分な勝ち額である。
巻島も喜ぶだろう。
細かな後処理は明日に回し、今夜はみんな解散となった。
直帰する者、一度署に戻る者、様々だ。
荒北は署の自転車置場に自分のチャリを取りに戻っていた。
新「お疲れ様、靖友」
ドキン!
サドルを取り付けていると、背後から新開の声がした。
胸が跳ねる荒北。
新開は後ろから荒北に近付き、肩からそっと腕を回した。
ドキドキドキドキ……。
鼓動が速くなる荒北。
新「オレんち……行こ」
新開が優しく囁く。
荒「……行かねー」
荒北は拒否するが、照れ屋の荒北が一度は断ることぐらい想定済の新開は、気にせずもう一度耳元で囁いた。
新「来いよ……」
荒北はクルッと振り返り、新開に言った。
荒「アレは、ナシだ」
新「は?」
驚く新開。
荒「何も無かった。忘れろ。オレも忘れる」
新「ちょ!待て待て待て!」
慌てる新開。
荒「どんな罰でも受けるって言ったろ」
新「言ったよ!言ったけど、そりゃないよ!どういうことだよ!」
新開は動揺を隠せない。
荒「岸神を見ていてよくわかった。野郎同士なんてキモイ。間違ってる」
新「あのヤロ……!この大事なタイミングで余計な印象を!」
新開は小鞠を心の底から呪った。
新「オ、オレ達は違うだろ!キモくなんかないよ!」
荒「苦しいぜ新開。間違ってんだよ、こんなこと」
新「靖友……キスした時、拒まなかったじゃないか」
荒「あれはキスじゃねェ。Luckを交換しただけだ」
新「Luckを交換て……運をあてにしないおめさんのセリフとは思えないよ」
荒「新開。オメーはあの非日常な雰囲気にあてられちまっただけだ。一時的な気の迷いってヤツだ」
新「一時的な気の迷い?違うよ靖友!オレは!オレはずっと前から!高校の時からずっとおめさんを!」
荒「言うな新開ィ!」
荒北は新開の口に手をあてて止めた。
非日常な雰囲気にあてられたのはオレの方だ。
そのせいでオレは今、新開を傷付けている。
こんなことは早く終わらせなきゃいけねェ。
荒北はそう思っていた。
荒「オレがオメーに求める関係は“恋人”じゃねェ。“相棒”だ」
新「靖友……!」
新開は愕然とする。
荒北は新開に背を向け、チャリに跨がり走り出した。
新開は去って行く荒北の背中に向かって叫んだ。
新「オレ!諦めねーからな!靖友ぉ!」
荒「うるせェ。オレを惑わすンじゃねーヨ」
荒北は振り向かずに呟いた。
無事に事件は解決したが、静かに燻る再犯の火種。
そして二人の心にも、熱い火種が燻り続ける。
自転車刑事チャリデカ。
チーム箱学の活躍は今日もつづく!
おしまい