チャリデカ2《カジノ編》 (長編20頁)★オススメ
広大なカジノフロアは大勢の客で賑わっていた。
手前に大量のスロットマシンがズラリと並び、奥へ進むとルーレット、バカラ、ブラックジャック、ポーカー等のテーブルが並ぶ。
キノやビンゴも開催されている。
競馬やスポーツに賭けることも可能だ。
奥へ行けば行くほどレートが高くなっていく構造になっている。
基本的に、プレイしている人はドリンク無料。
コーヒーやソフトドリンクからアルコールまで無料だ。
着席すると、カクテルボーイやカクテルガールがすぐにやってくる。
注文をし、受け取る時にチップを払うシステムである。
新「さ~て、オレ達は何をプレイしようか」
新開が指をポキポキ鳴らす。
荒「あ、オレぁギャンブルやんねーんだ」
新「ええ?」
荒北の返答に拍子抜けする新開。
新「尽八は?」
東「オレもやらん。どうしてもプレイヤーより、経営者側の視点で見てしまうものでな。ウチの旅館でも導入を検討しているところだ」
新開はガッカリする。
新「なんだよ二人共。せっかく来たのに。つまんないじゃないか」
荒北は不貞腐れる新開の肩に腕を回す。
荒「ついてってやっからァ、オメーだけプレイしろ」
東「オレも助言してやろう」
新「嫌だよ両側からギャーギャー言われながらプレイするなんて」
ブーたれる新開を連れて、3人はカジノフロアへ入って行った。
煌々と明るくきらびやかなネオン。
大音量のBGM。
コインの払い出される音。
あちこちで発生する歓声。
カジノフロアは、プレイヤーの思考力を麻痺させる魅力に満ちている。
しかし、奥へ進んで行くと、だんだんBGMも静かになり、照明も落ち着いていく。
はしゃぐ客も少ない。
高レートのコーナーは、静かにプレイする大人の場となる。
そして更にその奥へ進むと、重厚な扉が開かれており、その扉の向こうのフロアは全くの別世界である。
ドレスコードが設けられ、入口でチェックも行われている。
女性はカクテルドレス、男性はタキシードだ。
新「なんだい?あのジェームズ・ポンドな世界は」
新開は扉の向こうの社交界な様子を眺めながら尋ねる。
荒「あれは超ハイレートなフロアだ。最低チップは100$。金持ちだけが入れる部屋さ」
東「通称“クジラ部屋”。大量のコインを飲み込むという意味だ」
新「ひゃっ、100$?1万5千円じゃないか!1枚でも落としたりしたら大変だ!」
驚く新開に、東堂は不敵に笑って説明する。
東「コイン1枚落としたところで彼らは何とも感じはしない。実際クジラ部屋にはいくつもコインが落ちているのだ。そして誰も拾ったりしない」
荒「クジラ部屋のカクテルボーイは儲かるぜェ。なんせドリンク1杯運ぶだけでチップ1万5千円だ」
荒北もニヤリと笑う。
新「な、なんて世界だ……」
新開は全身の力が抜けていくのを感じた。
荒「ま、棲み分けは悪りィことじゃねェ。それぞれ身の丈に合った部屋で遊ぶだけさ」
東「上を見てもキリが無いからな」
3人は引き返し、中レート程のフロアへ行く。
東「なにかプレイしたいものはあるか?隼人」
新開はざっと見渡して言った。
新「うーん、やっぱりブラックジャックかなぁ。簡単そうだし」
荒「新開ィ、こっちだ」
荒北が新開を手招きした。
ブラックジャックのテーブルを指差す。
荒「ここに座れ」
新「え?」
荒北は新開に耳打ちした。
荒「オレが勝たせてやんよ」
新「!」