チャリデカ2《カジノ編》 (長編20頁)★オススメ





荒「これで誰にも聞かれねェな。なんだ、気になる事って。何があった」

 

荒北はパーカーのポケットに両手を突っ込みながら尋ねた。

 

 

新開は荒北に歩み寄り、正面に立って口を開く。

 

新「気になるのは……靖友のことだよ」

荒「オレ?」

 

 

新「おめさんが……オレのディーラー姿見て『ときめいた』なんて言うから」

荒「!!」

 

荒北は飛び上がった。

みるみる顔が赤面していく。

 

 

荒「テメ!人が真面目に聞いてンのに……それに『ときめいた』なんてひとっ言も言ってねーダロ!あれは『ドキッとした』って言ったン……ハッ!!」

 

それを聞いて新開は荒北を愛しそうに見つめ、満足げに微笑んだ。

 

 

荒「テメ、謀っ……」

 

真っ赤になりながらそう言いかけた途端、視界が暗くなり、唇に柔らかいものが触れたことに荒北は気付いた。

 

荒「……!」

 

 

押し付けられたそれは、しっとりと自分の唇に吸い付き、溶けてしまいそうに柔らかく、そして、熱い。

 

 

荒北は驚いて目を見開いているのだが、目の前は何かに塞がれているように暗く、夢か現実かわからない。

 

 

 

ちゅ……っ。

 

と、小さな音を立てて新開がそっと唇を離したことで、荒北は自分がキスをされたのだと初めて解った。

 

 

 

荒「てててテメ……なんてことしくさりやがりたまえむ」

新「なに言ってんのかわかんないよ靖友」

 

動揺して声が震えている荒北に、新開が優しく囁く。

 

 

唇を離したといっても、まだ吐息がかかるほど互いの距離は近い。

 

新開は指先で荒北のこめかみ辺りの髪をすいた。

 

ビクッと跳ねる荒北。

 

指先がそのまま地肌をなぞり、後頭部へ進む。

 

その感覚に荒北はゾクゾクッとし、息が止まる。

 

 

ドーン!

 

その時、窓の外で大きな花火が炸裂した。

 

見つめ合う互いの顔が赤や青の光に照らされ幻想的に輝く。

 

 

新開は再び荒北の唇に自分の唇を重ねた。

 

今度はさっきよりも強く、荒々しく。

 

 

荒「ン……」

 

新開の舌が荒北の唇をこじ開けて入ってくる。

 

荒北の舌はすぐに新開の舌に確保された。

捕らえられて逃げることが出来ない。

ねっとりと、激しく、熱く、新開の舌にねぶられる。

自分の舌がとぐろで締め付けられているような錯覚に陥る荒北。

 

かと思うと舌圧を緩められ、優しく柔らかく舌全体を舐められる。

 

荒「ん……ふ……」

 

荒北の舌は新開に深く吸い付かれ、このまま抜き取られてしまうのではと不安になる。

 

しかしすぐに吸引は緩み、今度は優しく甘噛みされる。

 

荒「あン……」

 

その甘噛みが思いのほか気持ち良くて荒北はピクンと反応し、つい喘ぎ声が出てしまった。

 

新開は荒北が舌の甘噛みを気に入ってくれたことを認識し、何度も何度も優しく噛んだ。

 

荒「ア……はァ」

 

 

荒北は頭がクラクラして何も考えられない。

シャワーを浴びたばかりの新開からむせる程の石鹸の香りが漂いボーッとなる。

部屋の中は花火の明かりで様々な色に移り変わり、幻覚でも見ているかのような気にさせられる。

ニューヨーク・ニューヨークのメロディが何度も耳にループする。

ここは本当に日本なのか、今自分はどこにいて、何をしているところだったのか、もう何もわからない。

 

 

膝に力が入らなくなってきて崩れそうになり、荒北は新開の腕に思わずしがみついた。

それを受けて、新開は荒北の背中に腕を回し、グッと力強く抱き寄せた。

 

荒「あフ」

 

急に強く抱き締められ、口から空気が漏れる。

 

 

互いの舌を絡め合うことがこんなにも快感を呼び、いつまでも続けていたいという気持ちになるものだということを、荒北は初めて知った。

 

 

 

 

 

東「あと少しで集合時間だ。散っている者共はそろそろ帰って来るのだぞー」

 

「「!!」」

 

 

突然、テーブルに置いたインカムから東堂の声が響き、驚いた二人は弾け飛ぶように離れた。

 

 

 

お互い激しい息遣いのまま見合う。

 

荒北の脳が現実に戻って来る。

 

お互いの唾液でびしゃびしゃになっていた口元を、荒北は手の甲で拭った。

 

 

 

荒「この野郎……仕事終わったら……覚えてろヨ」

 

荒北は新開を睨み付けて凄んだ。

 

 

 

新「……どんな罰でも受けるよ……」

 

新開は真っ直ぐ荒北の目を見つめて答えた。

 

 

 

荒北はフラフラと与太りながら部屋を出て行く。

 

新「靖友!インカム!」

 

新開が呼び止める。

 

荒「っせ!知ってンよ!」

 

荒北はすぐ戻って来てテーブルの上のインカムを乱暴に引ったくると、再び部屋を出て行った。















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イイネ