チャリデカ2《カジノ編》 (長編20頁)★オススメ
何デッキも繰り返し、順調にコインは増えていった。
現場のメンバーもだいぶ慣れ、インカムで世間話しながらでもプレイ出来るほどになっていた。
黒「仲間、やっぱ居ないみたいスね」
荒「あァ。予想通りピンだ」
荒北は最初から岸神小鞠をピンだと確信していたが、念のため仲間の存在のチェックも行った。
もし仲間がいるとしたら、小鞠が現れる前から場の様子を見に来ている筈だ。
しかしそれらしい人物は皆無だった。
荒「よォし野郎共、休憩だ。時間差をつけて従業員用食堂に集合。タキシード組は上着をクロークに預けて来るよォに」
荒北が号令をかけた。
みんな慣れないことをして疲れている筈である。
カジノは夕方に自然と客も入れ替わる。
本番は夜だ。
ゆっくり休ませることにした。
~従業員用食堂~
巨大なカジノホテルは従業員の数も半端ない。
その食堂もドームのような広大さであった。
荒「お疲れサン。みんなよくやってくれてらァ。期待以上だ」
荒北が全員を労う。
みんな蝶ネクタイを外し、首元を開襟して寛ぐ。
泉「大変ですけど、慣れたら流れ作業ですし会話する余裕も出てきてホッとしました」
東「まあ、オレ達は荒北に指示された通りに賭けてるだけだからな」
福「休む暇無く全てに目を配り一番神経を使っているのは荒北、オマエだ。オマエが一番休め」
荒「福ちゃん……。オレぁその分楽チンな格好してっから大丈夫だヨ。あ、そうだ福ちゃん、そういやMr.ピエールが同窓会をって……」
食事をしながら前半の反省会や後半の打ち合わせをする。
そのうち外は日が暮れてきた。
荒「どうした新開ィ。さっきからおとなしいじゃねェか。疲れたか?」
荒北は、あまり会話に入ってこない新開が気になって声を掛けた。
新「あ、いや、ちょっと考え事……」
荒「考え事ォ?おいおい、これから本番なんだぜ。なんだ、言ってみろや」
新開は席を立って言った。
新「次の集合時間までまだあるよな。オレちょっと控え室行ってシャワー浴びてくるよ……」
荒「え?オイ」
荒北は様子のおかしい新開が心配になり、部屋までついて行った。
~客室~
新開はシャワーを浴びている。
荒北は部屋の大きな窓から外を眺めた。
眼下には大きな噴水があり、音楽に合わせて水流が踊っている。
流れているのはブランク・シナトラの名曲ニューヨーク・ニューヨークだ。
そのうち花火が上がり出した。
「へっ。どこの国もラスベガスのパクりばっかだなァ」
荒北は苦笑いした。
カチャ。
バスルームから新開が出てきた。
ディーラーの制服を簡単に羽織り、ドライタオルで髪を拭いている。
荒北は早速話し掛けた。
荒「新開、本番前だから緊張すンのは解るが、オレがちゃんとモニターで見てっから安心して……」
新「ん?全然緊張なんかしてないよオレ。むしろディーラーの役、楽しいし」
新開はケロッとした顔で言う。
荒「えェ?じゃァなんなんだヨ考え事って。本番前に余計な事考えンな」
新「だって、気になる事あってさ」
荒「だからなんなんだヨ。さっさと解決して本番に集中してくれねェと困ンだよ」
荒北はイライラしている。
新開は人差し指を口の前で立てた。
荒「……!」
そして荒北の耳元と首元に手を伸ばし、インカムを剥がした。
少し離れた位置にあるテーブルにそのインカムを置く。
荒「……」