チャリデカ1《八百屋お七編》 (短編3頁)





ガシャーン!

 

「コンビニ強盗だーっ!」

 

 

 

カウンター上の肉まんケースを倒しながら、犯人は店外へ逃げる。

 

店員は渾身のスライダーでカラーボールを犯人にぶつけた。

 

犯人は出入口付近に停めてあったママチャリを盗み、一目散に走り去る。

 

 

 

『○○3丁目でコンビニ強盗発生。犯人は男20代ボサボサ髪、緑色のレーシングスーツ。オレンジ色の塗料を付け、国道△号線を盗難ママチャリで北上中』

 

 

 

無線を聞いた新開は、キュッとヘルメットの紐を締め直した。

 

新「OK。行くぜ靖友!」

荒「あいヨ新開!」

 

荒北は新開と共にロードに跨がり、犯人の逃走先へ向かった。

 

 

 

 

 

犯「オラオラオラどけコラァ!ワシゃあ呉の闘犬じゃあ!ママチャリだからってなめんなぁ!」

 

 

車の間を縦横無尽にすり抜けながら、全速力で国道を逃げる犯人。

しかし背後から1台のロードが猛スピードで近付いて来る。

 

犯「な、なんじゃあ、あのロード!速えぇ!」

 

犯人は必死にダンシングするが、あっという間に距離を縮められる。

 

 

犯「くそっ!」

新「靖友!」

 

その瞬間、荒北のロードが真横の路地から飛び出してきて、犯人に体当たりした。

 

荒「うらあッ!」

 

グワシャーン!

 

 

犯「ぐぎゃああ!」

 

 

 

二人は倒れた犯人に飛び掛かって取り押さえる。

 

カシャン!

 

荒「確保ォ!」

 

犯人に手錠を掛けた荒北が確認した。

 

 

 

荒「ン?オメー、まさか……待宮?」

 

待「へ、へへ……。久しぶりじゃのう、荒北刑事」

 

待宮は擦り傷だらけでニヤリと笑った──。

 

 

 

 

 

 

 

 

~取調室~

 

 

荒「これで5回目じゃねェか。なにしょっぺェ事件ばっかやらかしてンだよ待宮ァ」

 

荒北は呆れ顔で言う。

 

 

待「ワシにゃあ呉の港に養わにゃいけん部下が5人おってのぅ……」

荒「言い訳も毎回同じだァ。新開ィ、前回のコピーでいいぜ調書」

 

後方の机で調書を書いている新開を振り向く。

 

 

荒「ったく、しょーがねェなァ。とりあえずこれでも飲んどけ」

 

荒北は待宮にベプシを差し出した。

 

待「おお!すまんのう!へ、へへ」

 

待宮は目を輝かせて受け取り、そのベプシを大事そうに抱える。

 

 

 

荒「ン?飲んでイイぜ。飲まねェのか?」

 

飲まずに愛しそうにベプシを撫でている待宮を見て、新開はガタッと椅子から立ち上がった。

 

 

新「待宮くん……おめさん、ひょっとして……」

待「な、なんじゃあ?」

 

待宮は新開の雰囲気を警戒してベプシを庇いながら身を硬くする。

 

新開は冷たい目をして待宮を見下ろした。

 

新「靖友に毎回ベプシ奢ってもらえるのが病み付きになって事件を……?」

待「ギクウッッ!」

 

 

 

ベキッ!

新開は鉛筆をへし折った。

荒北に向き直り、指差して声を張り上げる。

 

新「またこのパターンか!靖友!これで何人目だよ!この男ったらし!」

荒「ひ、人聞き悪りィ言い方すんな!オレがいつ野郎をたらし込んだってンだ!」

待「まぁまぁ新開刑事、落ち着きゃーせ。男のヤキモチなんて見苦しいけぇのう」

 

 

新開は待宮をキッ!と睨み、胸ぐらを掴んで凄む。

 

新「二度とママチャリ乗れない身体にしてやろうか」

待「や、八つ当たりで官権の暴力けぇ!可視化はどうなっとるんじゃあ!弁護士!弁護士ぃ!」

荒「やめろ新開。オメーこの前もそうやって机壊したろ。また始末書だぜ」

 

 

新開は待宮を乱暴に突き放し、

 

新「靖友のバカ!」

 

と吐き捨ててバターン!と取調室の扉を閉めて出て行った。

 

 

 

荒北が首の後ろを掻きながら、

 

荒「なに怒ってんだアイツ。普段は温厚なのにたまにああやってキレんだよなァ」

 

と言うので、待宮は驚いた。

 

 

 

待「荒北刑事……オメ、なんで新開刑事が怒ってんのかマジわかんねーのけ?」

荒「え?オメーわかんの?教えてくれヨ」

 

 

 

待「……はぁ。こりゃあ新開刑事に同情するわい」

 

 

待宮はやれやれという感じでため息をついた。















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