独り言 (短編3頁)
「……とまぁシミュレーションしてみたんだけどさ、基本的なオレの考えは変わらないから」
……は?
「男が妊娠するわけねぇしな」
このヤロ……!
風邪治ったらぜってー殴ってやっからなァ!
待ってろよゴラァ!
「オレはさ、おめさんが居りゃあ子供なんかいらねぇよ。だけどさ、おめさんがもし子供欲しがったらどうしよう、って。オレ産めねぇしさ」
……。
「でもさ、オレそんなことで身を引いたりしねぇからな。おめさんを女に取られるぐらいならおめさんを殺してオレも死ぬ」
穏やかじゃねェなァオイ。
「どうしても子供欲しいってんならさ、養子とかさ、体外受精とか?代理母とか?よく知らねーけど。なんか色々方法はあると思うんだ」
オレ別に子供欲しいとか、そんなこと全く考えたことねェんだけど。
なんでこんな話になってンだよ……。
「まぁ、子供の話はともかくさ」
子供の話終わりかよ!
コロコロ変わンなァオメーの頭ン中は!
「結婚は、絶対したいと思ってるんだ。同性婚の出来る国行ってさ。アメリカとかイギリスとか」
……。
「靖友。オレ、何があってもおめさんと別れねぇからな。おめさんがどんだけ頼む別れてくれって言っても絶対離れねぇから」
…………。
「おめさんと出逢う前のオレはもっとドライだったよ。けど、もうおめさんを知っちゃったからさ。もう戻れねぇ。オレの人生はもうおめさんがいないと成り立たねぇんだ。何でも二人単位で考えてる」
……すげェ愛の告白だよなァ。
新開のすげェのは、どんなに赤面する内容でも、こうやって正直に気持ちを伝えるとこだ。
素直で、裏表なくて、ストレートで、隠さねェ。
だからコイツは信頼出来るし、尊敬出来る。
コイツは絶対オレを裏切ることはねェ、って確信出来るんだ。
オレぁコイツのこういうトコがすげェ好きだ。
……だけどオレはこの気持ちをコイツみてェに素直に口に出せねェ。
言ってあげたらすげェ喜ぶだろうなァ。
すまねェと思ってるンだぜ、これでも。
「例えばさ。おめさんが誰かをすげぇ憎んでて、ソイツを殺す計画を立ててるとするだろ」
な、なンだいきなりその例えは……。
「普通はさ、それを知った恋人は止めるだろ。そんなことしたら一生ムショだぞ、親が泣くぞ、相手にも家族がいるぞ、自分を大切にしろ、ってさ」
まァそうだろうな。
「けど、オレは違う。おめさんに協力するんだ。計画から実行、逃走、潜伏まで。一人より、二人で協力した方が絶対成功するからな。もし捕まりそうになったら、一緒に死ぬんだ」
オイオイ……。
破滅願望でもあンのかよオメー。
「靖友……。わかるかい?これはな、オレがおめさんを信じてるってことだ」
……え?
「オレはおめさんの倫理観、正義観を絶対的に信用してる。つまり、おめさんが本気で殺したいとまで思う相手は、本当に“悪”だってことだ。だからオレは全面的におめさんに協力出来るんだ」
新開……。
「いくら世論や法がダメだと言っても、オレはおめさんの味方だ。オレが囮になっておめさんを逃がすなんてこともしないからな。逃げるなら二人一緒だ。オレ達は一蓮托生。絶対離れないんだ。靖友……。オレの愛し方ってのはこうなんだよ」
……。
ヤベェ、なんか泣けてきた……。
てか、今すげェコイツを抱きしめたくてたまらねェ。
けど動けねェ。
もどかしいぜクソッ。
(つづく)